10月23日(日)、日本映画・ある視点『返事はいらない』の上映後、廣原 暁監督が登壇、Q&Aが行われました。
Q. 客席でご覧になって、いかがでした?
廣原 暁監督(以下:監督):自分で言うのもなんですが感無量です。こんなに大きなスクリーンとこんなによく聞こえる音で、本当によかったです。
Q. 脚本は監督の恋愛体験からきているのかフィクションなのか、どちらでしょうか?
監督:基本的にはフィクションですが、どうしてもそんなに人生経験も知識もないので、そこから材料をひねり出してくると、「これ、もしかして俺のことじゃないか」と思う部分はちょくちょくあったりはします。でも、フィクションです。
Q. 主役の2人が印象に残りますが、どのような経緯で起用したのでしょうか?
監督:太田順子さんは以前、一度お会いしたことがあるんですが、事務所の顔写真を見て、写真よりももっといいものを持っている気がして。実際お会いしたら、やはり事務所の顔写真がすごい無理をしている感じだったんですよね。そこが逆に好感を持てたというか。映画の中でも背中を向けたりすることが多かったんですけど、「私を撮らないでください」とまでは言いませんが、そのくらい引っ込み思案というか、そこがとても好感が持てました。佐藤貴広さんは、やはり顔がなんともいえない表情で、何を考えているか分かんないんだけど、なんとなく分かるっていう不思議な感じがとても良いなと思いまして、お願いしました。
Q. 主役の2人は非常に仲睦まじい感じで入っていくのですが、演出するにあたって工夫したことは?
監督:特別にリハーサルとかはしてないんですが、撮影の順番には気を使いました。家の中から、段々と外のシーンに行こうと考えていて、最初は朝起きるシーンから撮って、後は順撮りで進めました。
Q. 途中、東京に大地震が来るという話が出てきましたが、撮影時期は震災の後だったのでしょうか?
監督:撮影は去年の11月なので、撮影自体は地震の前です。テレビでも地震が来ると言われていて、そういう雰囲気が一番あったときのような気がします。その後、今のようになるというのは全く想像してませんでしたし、もちろん、そのときはこんな実感はなかったです。
Q.長回しと切り替えのアップの繰り返しがすごく映画的で気持ちいいと感じました。監督としては戦略的に意識して撮っていたのでしょうか?
監督:いつもなら撮影前にカット割りを考えるのですが、今回は東京芸大の学生がカメラマンとして入っていたため、一緒に相談しながら作り上げていったという感じでした。悪く言えばコントロール出来ていない、良く言えば少しずつ一緒に積み上げていったという感じです。
カット割りが難しい芝居もあったため、その点は苦労しました。編集スタッフに頼ることが監督なのかな、と考えながら撮影をしていました。
Q.ラストシーンについて。このまま終わるのかと思ったらあるシーンが最後にはさまれていました。監督ご自身はどういう意図でああいうショットを入れたのでしょう?
監督:終わり方をどうしようというのも考えていませんでした。ある日編集の人が編集したのを見たら、今の終わり方になっていました(笑)。
ただそれでいいのかと自分でも考え、相談して意図を聞きました。
映画の終わりがあそこにあり、ただ、そこで終わらず、続くだろう、というのがありました。
白いままでも良かったのですが、いや、あのシーンはあったほうがいいだろうと。
Q.これで物語が終わるというのではなく、この青春期の一つのエピソードのあとも人生が続くという、余韻を残す意図があったのでしょうか?
監督:ある種行き当たりばったりで、すべての過程を、すべて自分の思い通りに計算していれば、気持ちよくバスンと終われるんでしょうけど、それをやろうとすると上手くいかない。
色々と曖昧なことがあり過ぎて、それを認めて終わっていくしかない、というのが、ラストシーンにも反映されたなと思います。
Q.最後に今後の予定を聞かせてください。
監督:11月19日(土)から渋谷・ユーロスペースにて開催される「NO NAME FILMS」という、若手監督10人が短編映画をレイトショー上映する企画に参加しています。僕のほかにも才能のある若手監督の作品を一挙に観ることが出来るので、是非いらしていただきたいと思います。
来年の5月頃から新作を撮ります。10月に間に合えば、それを(また)東京国際映画祭で上映出来たらいいですね。