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2011.10.28
[イベントレポート]
霊的な直感を基に発展させた――10/23(日)アジアの風『マジック&ロス+避けられる事』Q&A

10月23日(日)アジアの風-女優=プロデューサー杉野希妃 アジア・インディーズのミューズ『マジック&ロス+避けられる事』の上映後、杉野希妃さん、リム・カーワイ監督によるQ&Aが行われました。
(大阪在住のカーワイ監督は、質問に対し全て日本語で回答されています。)
マジック&ロス

©2011 TIFF

 
司会は石坂健治 アジアの風 プログラミング・ディレクターです(以下:司会)。
 
リム・カーワイ監督(以下:カーワイ):こんばんは。今日は観に来ていただいてありがとうございます。映画はいかがでしたでしょうか。(拍手があがる)
 
杉野希妃(以下:杉野):今日はお忙しい中、観に来ていただきありがとうございます。この作品は普段アジア映画を見慣れていない人がご覧になると、唖然呆然とされるかもしれないと思うんですけど、ボーダーレスな無国籍な不思議な作品に出来上がったと思っています。皆さんのご意見を伺えたらと思っています。よろしくお願いいたします。
マジック&ロス

©2011 TIFF

 

司会:リム・カーワイ監督は現在大阪在住で、大阪大学を出て、原 一男監督の元で勉強をした後、北京電影学院に行き、日本でサラリーマンをされていたこともあるそうですね。

 

カーワイ:はい、大阪大学を卒業してからサラリーマンをしていまして、仕事を辞めてから映画を撮り始めました。

 

司会:お二人はどのように出会ったのですか。
 
杉野:私が一番はじめにプロデューサーをやるきっかけになったヤスミン・アフマド監督の企画『忘れな草』を持って釜山国際映画祭に行ったんですけど、そこでリム監督に会いました。マレーシアの出身の方だったので『忘れな草』制作する時にご協力いただくかもしれないという話をして、そこから仲良くなりました。

 

司会:最初は監督としてどうこうではなく、ヤスミン監督の作品作るからよろしくねという感じだったんですね。
 
杉野:はい、そうですね(笑)
 
カーワイ:当時は短編映画を作りながら映画のコーディネータをしていましたし、仕事もありませんでしたし(笑)
マジック&ロス

©2011 TIFF

 

司会:マレーシアと言っているけど日本語もしゃべれるし。
 
杉野:すごいんですよ、広東語も中国語もしゃべれるんです。どんだけ便利なんだって(笑) すごく才能もあって多彩な方なのでぜひご協力いただきたいと。
 
司会:何ヶ国語話せるんですか。

カーワイ:五つぐらいです(笑)日本語・英語・広東語・中国語・マレー語。

司会:杉野さんは日・韓・英語でしょ。

杉野:はい。
 
司会:作品とつながるんですけど、つまり無国籍でもあって多国籍でありますね。

 

Q.『新世界の夜明け』(カーワイ監督による2011年制作も一番最初は女性が一人で海外旅行に出るという設定からスタートしているのは今回と同じだと思いました。そういうところにも何かこだわりがあるのでしたら、教えてください。
 
カーワイ:こだわりがあるというよりも、「不思議の国のアリス」という小説がとっても好きです。”アリス・イン・ワンダーランド”というテーマがあちこちの映画に見られると思いますけれども、これは一つの僕のテーマかもしれないです。僕が作った映画は3本ありますが、全部ある人が訳のわからないところに迷い込んで、そして何か体験していくという話なのです。『マジック&ロス』も「不思議の国のアリス」で、二人の女性が謎のところに迷い込んで変な体験をしてしまうという話です。『新世界の夜明け』に関しても、テーマとして同じだと思うんですよね。
 
司会者:新作は大阪の作品ですよね。杉野さん特集で『大阪のウサギたち』も、あれは韓国の監督ですけど大阪で撮影ですね。何か大阪というのはインスパイアされるものがあるのですか?東京などと比べて、撮りたいと思うものがあるのでしょうか?
 
カーワイ:(大阪の)新世界には学生のころよく遊びに行ったことがあるのです。僕から見るととても面白い場所です。ロケ地としては、昔の日活映画のセットみたいという雰囲気がありまして、いつかあそこで映画を撮りたいなというのがありました。去年(2010年)、シネアスト・オーガニゼーション大阪(Cineastes Organization Osaka=CO2)というのがあって、僕は企画を出しました。その映画祭には大阪で撮らなくてはいけないという規定があるのですが、大阪で撮るならもう、”新世界”しかないです。
 
司会者:この作品には杉野さんも脚本開発から加わっているのでしょうか。
 
杉野:脚本開発というか、リム監督とジャック・ロジエの特集を見に行ったんです。その時日本にこういうバカンス映画ってないよねっていう話になりました。そこでアジアの多国籍なバカンス映画を作っちゃおう、て言うノリで始まったんです。結局バカンス映画にはならなかったのですが・・・女性が2人か3人いて、あと1人男性が入ってかき乱していくっていう映画を作りたかったのです。
 
司会者:バカンスもいろいろありますが、スピリチュアルなバカンスという印象がありました。
 
カーワイ:最初は本当にバカンス映画が作りたかったんですよ。実際にロケをしに行く間に、もしかしたら何か霊的な部分があるんじゃないかと思って、その直観を基にして、こういう形に発展していったのです。
 
杉野:実際に撮影現場の森に足を踏み入れた瞬間、かなりびっくりしたんですよ。何か霊が背中にとりついているぐらいの重さを感じてしまって。いろいろ変な音も聞こえてくるし。動物の死体とかがあるんですけど、自然にそれを受け入れられる自分がいて、これってもしかして土地の影響でそういう自分になってしまっているのかなって、という瞬間がたくさんあった場所でした。

 
司会者:それは大変よく伝わってきたと思います。

 

観客:非常に幻想的な話で不思議な映画でびっくりしたんですけれども、この作品はマレーシア事体では公開されたんでしょうか?女性2人のラブシーンみたいのが出てきますけども、ああいう描写はマレーシアでは大丈夫なんでしょうか?
 
カーワイ:そうですね。この映画はまだマレーシアで公開されてないです。おそらく検閲に通らないと思いますね。やっぱりそういうラブシーンがありますので。特殊上映とか、18歳以上(を対象にした)上映になると思うんですね。
 
杉野:特にマレーシアでは同性愛が厳しいというか、(上映は)無理だとは思います。でもあれをカットしては出来ないよね。やっぱりあの場面は陰と陽が一つになるみたいなひとつの描写なのでカット出来ないと思います。
 
カーワイ:実はかなりカットしました(笑)これは冗談です!

 

観客:大変素晴らしい映画ありがとうございます。この映画お酒を飲むシーンがちょくちょく出てきましたけど、食べるシーンや食べ物が一切出てこなかったんですが、その辺の意図をよろしくお願いします。
 
カーワイ:そうですね。自分も全く気がつかなかったんですが、たぶん特に意図はない。なぜかというと、まず、テーマというより制作の環境によると思う。それは予算がない中で、食べ物を用意するとしたらけっこう大変ですよね。ビールとかも本当のビールではないですから。瓶だけですよね。中身は水でした。
 
杉野:え。あれビールだったよ。チンタオだっけ。
 
カーワイ:最初はビールじゃないですよ。そのカット一本だけですよ。あとは全部水。
 
杉野:そうだっけ? わたしかなり酔っぱらってたんですけど。ほんとに飲んで。フラフラになりながらやってましたけど。
 
カーワイ:ほんとのビールではないです。
 
杉野:ほんとですか??
 
マジック&ロス+避けられる事

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