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2011.10.28
[イベントレポート]
農家との2足のわらじをはく監督、3年越しの作品を公開――10/24(月)日本映画・ある視点『ひかりのおと』:Q&A

ひかりのおと

©2011 TIFF

10月25日(火)、日本映画・ある視点『ひかりのおと』の上映後、山崎樹一郎監督が登壇、Q&Aが行われました。

 

Q.率直な感想はいかがですか?

 

山崎樹一郎監督(以下:監督):今までで一番良い環境で観たのですが、なかなか複雑というか、今すぐには言葉にならない状況です。はい(笑)

 

Q.昨日ぎりぎりまでテストランをされていましたが、粘った甲斐があったということでしょうか。

 

監督:映写技師の方もスタッフの方も、素晴らしい技術の方ばかりで、いつもはこんな素晴らしい環境で映写することはないので、ここまで見えてしまうのかと、出来なかったところを再認識しているところです。

 

Q.この作品は2年以上前から制作を開始していたということですが、企画から完成までの経緯をお話いただけますか?

 

監督:3年前に前作を岡山で撮影していた際に、本作のプロデューサーが岡山に来ていて、話をしたのがきっかけでした。そこから完成まで2年半くらいかかりました。みんな仕事をしながら空いた時間で集まって制作を続けていたので、簡単にはいきませんでしたが、少しずつ今の状態にしていきました。

 

Q.主役の男性は、最初からこの人と決めていたそうですが、彼の何に惹かれたのか、教えてください。

 

監督:僕が6年前に岡山に移住して、農家でアルバイトを始めたときに、彼に出会いました。稲苗を作ったり、酪農のトラックを掃除したりしている27、8歳の青年の存在が、僕のなかで新たな発見でした。そういうしぐさ、身振りが映画で広く伝わればと思い、彼を起用しました。

 

Q.女性が土地から去っていくことが多いというのがありましたが、それは実際起こっていることなのでしょうか?

 

監督:どんな土地でもあることだとは思うのですが、僕は今、90歳になる祖母と一緒に生活をしています。彼女はこの土地に嫁いで60年になるのですが、その間に起こったことを僕に語ってくれます。今回の作品中のエピソードも、自分で膨らませたというよりも、そのなかで実際に出てきた話が多いです。

 

Q.酪農や農業についてかなり問題提起をされていると感じたのですが、監督としてはどのように考えて作られたのでしょうか?

 

監督:僕もトマト農家を初めて6年目になります。今回の題材は酪農ということで、舞台になった三浦牧場の三浦さんには状況を取材しました。撮影開始時にはTPPという問題はあまり話題になっていませんでした。そこを問題にしようともあまり思っていなかったのですが、実際に問題があっても農家の人たちはあまり話したがらないので、話を聞いたというよりも、三浦さんが「ここを語ってくれ」と思っているだろう点を、僕なりに感じ取って表現した、という感じです。

農業問題って結構難しいので、僕もこの映画で語りきれたとは思っていません。ただ、何か感じ取っていただけたというのは、とても嬉しい感想です。

 ひかりのおと

©2011 TIFF

 

Q.エンディングの曲が賑やかでしたが、何か意図があったのでしょうか?

 

監督:色々な曲を試したのですが、やはり牛を見せたかった。全体としては少し違和感があるかもしれませんが、牛のエネルギーや今後の希望を、あの曲がうまく表現してくれていると思います。

 

Q. 子牛の出産シーンは、思ったように撮れたのでしょうか?

 

監督:もうちょっと出るのを粘って欲しかったなと思ったくらいで、ほとんど思ったように撮れています。たまたまタイミングが良かったというのもあったんですが、スタンバイの状態でできることはかなり少なく、牛を刺激しないというのが前提にあるので最小限のスタッフと万全の準備で、後はカメラマンが上手に撮ってくれたというがすごく良かったと思います。

 

Q. 監督自身は岡山でトマト農家をされていますが、本作にどのような影響が表れていると思いますか?

 

監督:都会にいてこの映画を作った場合、自信をもって描けなかったかもしれないですね。やはり自分も土を触っているということがあったので、できた演出もあったと思います。

 

Q. 監督は岡山に住んでいて、キャストの方もほとんど関西の方ですが、今後とも関西で映画作りを進めていくのでしょうか?

 

監督:住んでいる所で作らないと、やはり違うと思っています。もちろん東京の方が撮りやすいから集まるわけですが、いる場所で撮ればいいと思いますし、山の中でも撮れるわけで、いろんな場所でそういうことが起こっていけばその方が興味深いというか。あと、生活の余剰が表現になるべきだと思っていて、労働から生まれる田植え唄のようにその地域の風土とか気候とかを反映したものというのは、今のような作り方がいいのかなと。

 

Q. 農業と映画制作、2足のわらじは今度とも続けていくのでしょうか?

 

監督:そうなんですよ。2足のわらじ万歳というか、人なんてやりたいことはいっぱいあって、やってもいいしできるんであれば、いっぱいやればいいですよね。

 

Q. 今後の予定を教えてください。

 

監督:2011年10月29日から3月中旬まで、ほぼ土日、金曜などの週末、岡山県内で50カ所、100スクリーンを目標に巡回上映ツアーを行います。地産地消映画というPRをしているんですが、土地と地域の人たちのおかげでできた映画なんで、農産物と同じく文化も地元でとれたものは地元で食べるというのでいいんじゃないかと思っています。ぜひ、岡山のお知り合いがおられる方はちょっとずつ地元では盛り上がり始めているので、お声掛けしていただけばと思います。よろしくお願いします。

ひかりのおと

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