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2011.10.28
[イベントレポート]
観客が頭の中で組み立てていく映画にしたかった――10/27(木) コンペティション『別世界からの民族たち』:Q&A

10月27日(木)、コンペティション『別世界からの民族たち』の上映後、フランチェスコ・パティエルノ監督、とエグゼクティブ・プロデューサーのフランチェスカ・ディ・ドンナさんが登壇、Q&Aが行われました。
 
『別世界からの民族たち』Q&A

©2011 TIFF

Q.長年に渡るイタリアの状況への怒りが制作のモチベーションになったのでしょうか?
 
フランチェスコ・パティエルノ監督(以下、監督):今のイタリアの状況は刺激的で、自分をこの映画に駆り立てるものがありました。特に現在、イタリアは保守派と進歩派に二分しています。特に外国人やEU外から来た人たちへの対応が分かれていて、非常に不愉快な状況が作られています。
 

Q.オープニングシーンにあのようなシーンを持ってきた意図を教えてください。

 
監督:自分の映画の手法として、第一印象にインパクトをつけたかったのです。インパクトはあるけれども、実際は何を言いたいのか分からないというものを見せ、だんだんと映画が進行していくにつれ、観客が頭の中で組み立てていくものにしたいと思い、あのようなシーンをオープニングに持って来ました。
 
『別世界からの民族たち』Q&A

©2011 TIFF

 
Q.移民問題はヨーロッパ全土に共通する問題と捉えがちですが、たとえば同じシナリオをフランスやドイツなど、他のヨーロッパでも映画化することは可能だと思いますか?それとも特にイタリア的な要素があるといえるのでしょうか。教えてください。
 

監督:私たちイタリア人にとって、移民問題というのはある種特殊なところがあります。というのも、イタリア人は最初自分たち自身がアメリカなどに移民していたわけです。もうイタリア人自身そのことを忘れてしまっているかもしれないですが。
フランスやドイツも外国人の割合が高いと言えますが、彼らはその受け入れに長い歴史を持っているので、彼らがこのテーマで映画を撮るとしたら、また別の扱いになると思います。
また、移民問題はドラマティックでシリアスな撮り方になりがちですが、自分としてはもう少しアイロニックな作品にしたい、というのがありました。頭で考えるというより、気持ちで捉えられる映画にしたかったのです。
 

Q.すべてが可愛い登場人物達でした。監督としてはどの人物が主人公だと思いますか?
 

監督:自分にとってもこの映画の登場人物たちは興味深いです。それぞれがいい面も悪い面も持っていて、彼らが成長していくことが大切だと考えていました。特に3人の主役級の人物がいますが、自分の場合はアリエーレに共感出来ます。アイロニックでシニズムを持ち、映画のなかで一番成長し、重要な決定をする役です。
 

Q.老婆の像が燃えるのを皆が見ているシーンがあります。日本人として、少し空恐ろしい印象を持ちました。あのシーンはどういう意図があるのでしょうか?
 

監督:改めてこんな遠い国に来て皆さんに映画を見ていただけていることに大変感謝しています。東京に来て5日経ちますが、イタリアと日本の違いを感じています。イタリア人は騒がしく、大きな声で話します。恥ずかしいことに映画のように汚いことを言う政治家もいます。話していることや行動、伝統に対するアプローチに違いがあると思います。
イタリアではあのようなお祭りというのは、わりとたくさんあるのですが、人の形をしたものを焼くということは、浄化という意味合いあるのです。
 
『別世界からの民族たち』Q&A

©2011 TIFF

 
フランチェスカ・ジョイナ:特にフランチェスコの出身地のカンパーニャ地方では、新年のお祭りがあり、その際、古いものを窓から捨てる、という風習があります。その時期は通りを歩いていると、何かが降ってくるので危ない、と言われるのですが、悪いものとさよならをするという意味で、イタリアではよく行われます。

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