今回のTIFF上映作品の中でもトップクラスの人気を誇る、台湾発の「新しいのに懐かしい」青春おバカ系ラヴロマンスの傑作『あの頃、君を追いかけた』。その2回目の公式上映となる10/24(月)の上映終了後、待望のQ&Aが行われました。
大入り満員の客席からの拍手の中、登場したのはギデンズ監督と、主演のコー・チェントンさん、ミシェル・チェンさんの3人。まずは観客の皆さんへのご挨拶から。
ギデンズ監督:今回、日本に来ることができて本当に嬉しいです。この『あの頃、君を追いかけた』が、僕をここまで連れてきてくれたんですね・・・。じつはこの2~3日、僕は秋葉原に通ってフィギュアを買いまくっています。こんな僕の“幼稚”さは、この映画の主人公=コートンと一緒ですね。
コー:東京国際映画祭に参加できて、とても嬉しいです。僕にとっては2年ぶりの日本です。この作品を皆さんが気に入ってくれるといいのですが。
ミシェル:Hello everyone、ヨロシクオネガイシマス、ワタシハ“イェンシー”デス(※“イェンシー”とは、チェンさんの中国語名“妍希”のことです)。皆さんこんにちは、じつは私も約5年ぶりの日本です。前回はテレビドラマのプロモーションでの来日だったのですが、今回は初めて映画の仕事で日本に来ることができました。私がこの映画を通じて得た感動を、皆さんにも感じていただければいいのですが。私は本当にこの作品が大好きなので、皆さんにもそう思ってもらえると嬉しいですね。
引き続き、質疑応答に。
――この『あの頃、君を追いかけた』は監督の自叙伝的作品とのことですが、キャスティングをする際のポイントはどのようなものだったのでしょうか?
ギデンズ監督:一番のポイントはヒロインでした。シェン・チアイーは、僕が本当に大好きな女性でなければダメだと思っていました。たとえ出資者からの強力な推薦があったとしても、僕はそんなことには気をかけません。とにかく僕が気にいった、理想の女性でないと、この映画に「命が宿らない」と思ったんです。そして主人公は、なんといっても僕のようにカッコいい、ハンサムなところにこだわりました(会場爆笑)。
――主演のおふたりは、このような理由で選ばれたことをどう思われますか?
ミシェル:監督にそうおっしゃっていただくたびに、私はとても感動しています。ありがとうございます、監督。愛してます。
コー:もちろん嬉しいです。監督は僕の憧れの男性ですし、僕と同じくカッコいいんで(会場笑)。
――(中国語で)ようこそ日本へ。(以下、日本語で)8月に台湾旅行にいった際に、たまたまこの映画のポスターを見かけて、なんだかとても気になったものですから、言葉がわからないにもかかわらず映画館に入ってしまいました。でも、とても感動しました。監督に質問します。この映画で描かれているエピソードは、どのくらいが監督の実体験なのですか? また、映画の中でリンゴがモチーフとして取り上げられていますが、そこに込められた意味を教えてください。
ギデンズ監督:まず2つ目のご質問からお答えさせていただきますね。英語タイトルにもなっている“You Are The Apple Of My Eye”というのは英語のことわざのようなものでして、リンゴを目の中に入れても痛くない、それくらいキミが好きなんだ、という意味です。で、ひとつめのご質問ですが、僕が最初に書いた、この映画の原作小説に書いてあることは100%実体験です。小説と映画で異なっている点はいくつかあるんですが、例えば冒頭の教室のシーンで、コートンたちがシェン・チアイーにあきれられるシチュエーションがありますよね? そういう場面は小説にもあったんですが、映画的な変化を加えようと思いまして、男ふたりで「どちらが先にイクか」競争をすることにしたんです(会場笑)。また、コートンとシェン・チアイーのケンカは、小説では電話でしているのですが、映画ではビジュアルを重視して、同じ場所で、雨の中でするように変えてあります。物語の中で発生する事象の本質には違いはないのですが、画的な調整といいますか、より映画的なものをとりいれるようにしました。ただ、これは声を大にしていいたいんですが、映画のラスト10分で、コートンがシェン・チアイーの花婿にキスをしますよね? あれは実際にはやっていませんから(会場爆笑)。『あの頃、君を追いかけた』の小説を書くきっかけになったのは、シェン・チアイーの結婚式に出席したことです。その席上で、ホントに「花嫁にキスさせろ」「それならば、まずは新郎にキスしてからだ」というような会話が交わされまして、その時は新郎にキスしてもいいかな・・・ってちょっと思ったりもして、そんな思いがどんどんふくらんでいって、完成したのがこの作品なんです。
――監督は、自宅では全裸で過ごされているんですか?
ギデンズ監督:僕は服を着ています(会場笑)。なぜああいう設定になったかというと、もともとコートンが肌をみせるシーンはあったんですけど、コー・チェントンから「監督、僕は映画初出演なんで全裸になりたいです!」という申し出がありまして。
会場に充満する笑いと理解不能の感覚の中、マイクはそのコー・チェントンさんへ。
コー:とにかく最初の映画だったので、キスシーンだろうが、シャワーシーンだろうが、裸のシーンだろうが、なんでも全力でやってやろうと思いまして、監督にお願いしました。
ここで司会から「次は俳優の方への質問を」とのお願いが。
――(中国語で)私は六本木ヒルズで働いている上海人です。この作品は以前から観たいと思っていまして、今日は仕事をサボって観にきちゃいました。上司が来ていないといいんですが(苦笑)。監督はおいくつですか?
ギデンズ監督:33歳です。
――(続けて)私と同い年ですね。私は上海で青春時代を過ごしましたが、場所は違っても同じようなことをやっているんだなぁ・・・と思って観ていました。皆、スターに憧れ、授業中はバカをやって。そこで監督にご質問ですが、次回作もこのような青春ドラマをつくられるおつもりですか?
ギデンズ監督:今回はじめて長編映画を監督したのですが(※『あの頃、君を追いかけた』の前に、2009年のオムニバス映画『愛到底』の1エピソードを監督されています)、その動機は、僕の自伝小説を映画化するためには僕が撮るしかない!という思いでした。僕が今後、映画作品を量産していくかどうかはまだわかりませんが、幸いにも『あの頃、君を追いかけた』は好評をいただいています。でも、僕はまだ33歳なので、それほど「語るべき物語」をもってはいないんですよ。じつはいま、ひとつの物語をあたためているところです。もしシェン・チアイーを追い続けていた時のような、熱い気持ちをこの物語に注げるようになったら、僕はきっとまた監督をすると思います。
結果的に「俳優の方への質問」はなされなかったのですが、監督の“いい話し”が聞けたのでまぁいいか、というムードの中、再び司会から「今日は色んな国の方にご来場いただいているようですが、日本のお客さまもご質問いかがですか? ミシェル・チェンさんへのご質問をお願いいたします」との呼びかけが。
――私は台湾人なんですが、いいですか(笑)? どうしてもこの作品を応援したくて。チケット発売前からTIFFのサイトをチェックして、今日が来るのを楽しみにしていました。まず監督さんにご質問なのですが、いま台湾ではウェイ・ダーション(魏徳聖)監督の新作“賽徳克 巴莱”(※台湾映画史上空前の製作費を投じた、霧社事件を背景とした歴史超大作。日本からも安藤政信や河原さぶといった俳優陣が出演しています)が注目を集めていますが、彼のような新しい才能への競争意識のようなものはありますか? 今後はどのような“切り口”の作品をつくっていきたいと思いますか? また、ミシェルさんにも質問させてください。私はミシェルさんのことを台湾の誇りだと思っています。次回作はどのような作品になる予定ですか? 今後はどのような役を演じてみたいですか?
ミシェル:アリガトウゴザイマス、Thank you very much。応援してくださって本当に嬉しいです。これからもがんばって女優を続けていこうと思います。じつは年内にクランクインする予定の新作があるのですが、内容についてはまだお話しすることができないんです。私個人としては、これからも色んな役をやってみたいと思っているのですが、例えば人格が分裂しているような、そんな面白い感じの役をやってみたいですね。
ギデンズ監督:僕は長編監督第1作で高評価をいただきましたので、じつは台湾で映画を撮る大変さをあまりわかってはいないのですが、台湾映画界の環境が完璧に整うまでには、まだしばらく時間がかかるだろうとは思っています。ただ、僕は責任感が欠如した人間なので、好きな物語を、好きな俳優と一緒につくっていければ、それだけでいいんです。今回、グリーンカーペットをスニーカーで歩こうとしたら、周囲の人にとめられてしまいました。そういったことも含めて、僕は自分の好きなようにやっていって、そして皆に気に入ってもらえるような物語をつくれるタイミングがやってきたら、是非また映画を撮ってみたいです。
この質問は若干デリケートな内容を含んでいたのか、そのまま回答するというよりも、熟考して言葉を選んでいくような監督の表情が印象的でした。
――監督は、現在はジャンルを超えたご活躍ですが、もともとは作家ですよね。キャリア10数年で56作という多作ぶりとお聞きしています。今回の作品には「スラムダンク」や日本のAVが登場してきて、日本人としては親しみやすい部分も多かったのですが、監督のクリエイティビティに日本のカルチャーが影響したような部分はありますか?
ギデンズ監督:僕は日本の漫画をみて育った世代です。例えば、「ドラゴンボール」。僕はあの作品の影響でケンカばかりしていましたし、他にも「ワンピース」「ジョジョの奇妙な冒険」「はじめの一歩」「ルパン三世」が大好きで、日本の文化を吸収してきました。今回の映画をつくるに際して、そういった好きなものをできるだけつめこんでみようと思ったのは事実です。でも映画をつくっているうちにわかってきたのは、どの国の文化云々というよりも、国境を越えてわかりあえる感覚が確かに存在するということです。映画の冒頭の教室でのシーン。コートンがお尻を出すシーンで、皆さん笑ってくれましたよね? 人種も国籍も関係なく、お尻が出てくれば人は思わず笑ってしまう。愛も同じです。恋愛の感情は国を越えていきます。いま『あの頃、君を追いかけた』は香港で大ヒットしています。僕は、この作品が日本でも受け入れられると信じています。
あの頃、君を追いかけた