10月29日(土)、『ガザを飛ぶブタ』の シルヴァン・エスティバル監督、ミリアム・テカイアさん(女優)をお迎えして、記者会見が行なわれました。
■ 日時・場所
10月29日(土) 15:00~ @ムービーカフェ
■ 登壇者
シルヴァン・エスティバル(監督/脚本)、ミリアム・テカイア(女優)
「主演したサッソン・ガーベイさん、または“豚ちゃん”の代わりに私がここにいて、がっかりされている方がいないと良いのだけど・・・!」
とチャーミングな笑顔のミリアム・テカイアさん。そして初めて訪れた東京を「色々な小さい特別な世界が集まったような都市」と表現するシルヴァン・エスティバル監督。シリアスなテーマをコミカルに描いた作品について、お話しいただきました。
Q: 豚を主人公にしようというアイディアは、どこから出てきたのですか?あの“豚ちゃん”は今どうしているのですか?
監督: ある晩ホテルにいた時、当初は中東の紛争についての映画を撮るつもりではなかったのですが、両方のコミュニティの接点を描くためには、豚が良い題材になると考えつきました。それはいずれのコミュニティにおいても豚は拒絶されているからです。両者が拒むものを、両者間の平和の接点として使うことができれば面白いと考えたのです。それから、アイツですか!南フランスのピレニア山脈のふもとの素敵な場所にいますよ。
Q: なぜ、ラストシーンにファンタジー要素を取り入れようと思ったのですか?
監督: コメディでありながら、テーマは強く悲しいものなので、エンディングをできるだけ良いイメージで締めくくりたいと思いました。両者間の平和とはどのようなものであるかを象徴するような終わり方をね。ヨルダン川西岸を尋ねた時、二人の男性が向かい合って立っている場面に出くわしました。二人とも怪我をしていました。この場面を、二人のダンサーで象徴的に表現したいと思いました。ハンディキャップを追った二人が一緒に踊ることで、問題があってもこうやって楽しいことを一緒に行うことで共存して行けるのだとね。
Q: 監督はウルグアイにお住いとのことですが、イスラムとユダヤの両方の文化をしっかりと盛り込んでいらっしゃりました。ジャーナストとして、中東に関する取材を続けてこられたことも、この作品の背景にあるのでしょうか。
監督: ヨルダン川西岸地区を訪れことがあり、映画の中にも私がそこで見た要素が含まれています。例えば、軍の検問所、それからビルの上で暮らすパレスチナ人家族です。もちろん想像した要素も含まれています。一度、こういったプロジェクトを試みたことがあります。10メートル程離れた距離で暮らす、ユダヤ人家族とパレスチナ人家族のそれぞれにカメラを1台ずつ渡しました。そして、1年間の日々の生活の様子を写真に撮るようにお願いしました。1年経って、それぞれが撮った写真を交換して見てもらい、コメントをもらいました。普段「敵」だと思っている相手に対して、視点を変えて見てもらいたかったからです。そういった小さなプロジェクトをきっかけに、両者の間に平和が生まれることを願いました。
Q: ミリアム・テカイアさんは、チュニジアのご出身ですが、ユダヤ人の役を演じられた感想をお願いします。
ミリアム・テカイア: チュニジア人としてではなく、世界市民としてエレーナ役に挑みました。もちろん、この紛争は悲しい問題です。エレーナについては、ユダヤ人としてというわけでないのですが、役作りに苦労しました。役者としてある役を引き受けた場合、その人物のすべてを受け入れ、共感し、正当化できるように演じることは当然のことですけどね。
Q: ユダヤとパレスチナの問題はこれまでも何度か映画化されてきましたが、新しい視点として盛り込まれた点はありますか?
監督: 新鮮な、ちょっとコミカルな視点でこの紛争を捉えてもらいたいと思いました。片方からの視点ではなく、両方の問題を取り上げることを意識しました。どちらの立場にいても、ある意味この作品を楽しんでもらえる、拒絶したい場面もあるかもしれませんけどね。私にとっての真実を、攻撃的な方法ではなく、笑いをもって、どちらもこの問題の犠牲者なのだということを描きたかったのです。この問題に巻き込まれた、大多数の、政治に関与していない、普通の暮らしを求める普通の人々の物語です。
ミリアム・テカイア: 監督がいつも言うように、紛争に対する激しい憤りと不条理さをコミカルに描いた作品ですね。