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2011.10.29
[イベントレポート]
黒澤 明は亡くなっていても作品を通して生きていて、影響を与え続けている――10/24(月)特別上映 巨匠へのオマージュ 『黒澤 その道』:舞台挨拶

10月24日(月)、特別上映作品、あくなき探求心で映画表現を開拓し続けた巨匠 黒澤 明へのオマージュ『黒澤 その道』のカトリーヌ・カドゥー監督をお迎えし、舞台挨拶が行なわれました。
10/24『黒澤 その道』舞台挨拶

©2011 TIFF

 
■日・場所
10月24日(月) @TOHOシネマズ六本木ヒルズ SCREEN 5

 
■登壇者
カトリーヌ・カドゥー (監督)

 
カトリーヌ・カドゥーさんは、流暢な日本語で、また、本人のご希望で立ったままで黒澤明監督との思い出やエピソードなどをお話しくださり、観客からの質問にも笑顔で応じてくださいました。
「心から皆さんに、ありがとうございます!また、今日お見えになっている二人の私の映画にも出ている偉大な監督、ミスター・アッバス・キアロスタミ、そしてミスター・塚本晋也!是非拍手をお送りください。本当に感謝しております。」

 
司会者のまるで1990年のカンヌ映画祭にいるような気分になる素晴らしい映画でしたというコメントに対してカドゥーさんは、「とても印象深い出来事でした。『夢』という映画のカンヌのオープニングの時に、ジル・ジャコブ氏の提案で10人のパルム・ドールの受賞者で先生をお迎えしましょうということになったのですが、その話を聞いたカンヌに来ていた映画人たちが、『私たちも舞台にあがりたいです。先生に感謝の気持ちを伝えたいです。』とまるで舞台みたいに賑やかな場になっちゃって・・・先生も驚かれたと思いますし・・・私も通訳できないくらいドキドキしていました。」と振り返りました。

 
黒澤監督のドキュメンタリーを撮ろうと思ったきっかけについては、2009年のベネチアの時に黒澤100周年を迎えて国際的なシンポジウムのようなものがあり、「日本で黒澤先生の作品はあまり観られていない」こと。それから「塚本晋也さんから16歳の時に『七人の侍』を観て映画監督になった」という話など耳にし、「先生は亡くなっていても作品を通して生きていて、影響を与え続けていると。その生きている姿をできるだけ私が、監督を一番把握できている監督たちの話などで、黒澤さんが何故世界中で一番愛されている監督なのかを、それを撮りたいなと思いました。」

 
このドキュメンタリーには、世界の巨匠と謳われる11名の監督が出演しています。「黒澤さんに実際に会っている人も会っていない人もいるので、質問はひとつにしました。先生の100年祭のお祝いに、一番好きな先生の映画のワンシーンについて語っていただきたいという手紙を出したんです。」一番難しいと思っていたクリント・イーストウッドは、「『用心棒』の話だったら喜んで」と周囲を驚かせたそうです。

 
カドゥーさんだけが知っている黒澤エピソードとしては、「専門的な話ですが字幕についてのエピソードで、先生が『八月の狂詩曲』で私の字幕の作り方にとても感激してくださったことがありました。後の『まあだだよ』の時には遊び言葉とか擬音語が多く、わからないことは黒澤監督が一日かけて丁寧に説明をしてくれました。ある表現について、字幕にならないというと、ものすごくがっかりした顔をして、でもカトリーヌならできるよとおっしゃってくださいました。」

 
カドゥーさんが一番好きな黒澤作品は、『姿三四郎』と『夢』だそうです。「『姿三四郎』は、柔道の草分け(的存在の人)の話ですよね。スポーツから自己鍛錬に変える道がよく描かれてる。わたしの映画の題『黒澤 その道』もそこから取りました。それは、『自己鍛錬の道』、『人間を知るための道』、人は自分を通して人間を知ることができるのです。『夢』はものすごく自由に溢れている楽しい映画。この映画の中で問われている問題は幅が広いし、扱い方も素晴らしいと思います。80歳になって8話。それぞれが一本の映画の様な難しさで、すごいなと思います。」

 
黒澤監督と深い信頼関係を築いていたカドゥーさんは、「この映画をつくってようやく元気になりました。監督たちに質問するとき、黒澤監督の存在を感じました」と語っていました。
10/24『黒澤 その道』舞台挨拶

©2011 TIFF

 
『黒澤 その道』は、仏テレビ局でのオンエア以外は各地の映画祭で招待作品として限定公開されています。現在、版権の問題で日本を含む全世界、展開を交渉中とのことです。

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