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2011.10.29
[イベントレポート]
10/27(木)日本映画・ある視点 『今日と明日の間で』:Q&A

10/27(木) 日本映画・ある視点『今日と明日の間で』の上映後、小林潤子監督が登壇、Q&Aが行われました。

 

©2011 TIFF

 

―― 最初に一言お願いします。

 

小林潤子監督(以下、小林監督):ご来場いただきましてありがとうございます。完成までに紆余曲折あり、映画をどのように着地させればよいのか悩みましたが、各関係者様の深いご理解とご協力、そして愛情にあふれた気骨あるスタッフのおかげで、この日を迎える事が出来ました。

首藤康之さん、首藤さんとの出会いを作ってくれた石川プロデューサー、カメラマンの岩崎さんにこの場をかりてお礼を言いたいと思います。ありがとうございます。

 

 

-- どのような経緯で椎名林檎さんが音楽を担当することになったのですか?

 

小林監督:首藤さんと椎名さんは以前からお知り合いで、お互いをリスペクトしあっている関係だったんですね。そのお話を伺ったときにピンときて、首藤さんに提案したところ、お話を持って行ってくださいました。

 

 

Q:素晴らしい映画をありがとうございました。この作品を撮っているなかで、監督にとって1番の挑戦となったのはどんなところですか?

 

小林監督:首藤さんを撮っていくうえで1番難しかったのが、距離の取り方でした。近づきがたい雰囲気を感じてしまって声をかけられずもどかしい思いをしたり、カメラがいることが申し訳ないと思い込んでしまったりする状況が続き、たくさんの時間を費やしました。この映画に出演されている斉藤友佳理さんに「本人は目の前のダンスのことしか見てないから、こちらのことを邪魔扱いしているわけじゃない」と言われたのですが、そのことが分かるまでに時間がかかりました。

通常のドキュメンタリーでは、趣味や家庭での様子といったように違った面からのアプローチを考えていくのですが、首藤さんの場合はダンス以外のアプローチ方法を想像することができませんでした。なぜだろうと考えた時に、それは首藤さんの頭の中がダンスでいっぱいだからということに気づいて、ダンスからアプローチをするしかないのだとわかりました。今までそういうような撮り方をしたことがなかったので、腹のくくりどころでした。

 

 

Q:テレビと映画では、ドキュメンタリーのアプローチは違いますか?

 

小林監督:アプローチ方法は全く変わっていません。映画、テレビという違い以前に首藤さんという大きな存在がいるので、それだけでした。ただ映画の撮影には慣れていなかったので、スタッフからいただいた色々なアドバイスは非常に活きていると思います。

 

©2011 TIFF

 

Q:首藤さんの踊っている時の目つきや顔つきがとても迫力があるなぁと思いましたし、色んな魅力がある人なんだなぁというのが伝わってきました。監督は、首藤さんのどの部分を最も興味深いと感じましたか?

 

小林監督:最初に会ったときの印象は、目の光が強い方だなと思いました。目がきらきらと輝いていて、生まれたてのように澄んでいる方だなぁ、と。こんな目をしている方に出会ったことがなかったので印象的でした。

首藤さんの言葉で最も感動したのは、「ダンサーの原点はどういうものですか?」という質問に対しての、「踊りたいから踊ってるんですよね」というお答えです。まっすぐで飾りがない言葉が首藤さんらしいな、と思いました。そのようなシンプルな感動を、よく感じていた気がします。

 

 

―― そもそもなぜ首藤さんのドキュメンタリーを撮ろうと思ったのですか?

 

小林監督:2009年の暮れに首藤さんが面白い舞台をやっていると聞き、アートとコンテンポラリーダンスが融合した『時の庭』のリハーサルを見学させていただきました。首藤さんがやってきたバレエとは全く違うタイプのダンスで、バレエの世界で確固たる地位を築いた方が、引退してもおかしくない38歳という年齢で、なぜこの舞台に挑戦したのだろうかと不思議に思いました。そしていざ本番になると、練習での葛藤が嘘のようにとても魅力的なパフォーマンスをしていて、引き込まれました。首藤さんが「肉体と精神は反比例していく。肉体は衰えていくけれど、精神は成熟していく」おっしゃっていたのですが、首藤さんがそれをどのように受け止めているのだろうか、そこにはせめぎあいや葛藤があるのではないだろうかと考え、興味を持ちました。

 

 

Q:素敵な映画をありがとうございました。撮影中に、首藤さんのもがきや葛藤を目にしたことはありますか?

 

小林監督:首藤さんに非はないのに、自分を責めるような発言したことがあります。その時に、決して人のせいにすることはせず、必ず自分で受け止める方なのだなぁと思いました。もがきではないのですが、戦っているというか自分に問いかけているような感じで、ものすごく首藤さんのことを好きになりました。

首藤さんは基本的にはそういうところをお見せにならないので、ドキュメンタリーとしては苦労する部分でしたが、彼のなかではダンスに対しての純粋な愛情がなにものにも勝っているのだということを撮影中に思いました。

 

 

Q:監督の1番お気に入りのシーンはどこですか?

 

小林監督:踊り続けるラストカットが1番好きです。
 
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