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2011.11.04
[イベントレポート]
人々の心が暖まるような映画を作ってみたいと思いました。――10/日27(木)、29(土)日本映画・ある視点『春、一番最初に降る雨』:舞台挨拶、Q&A

10/27(木)日本映画・ある視点『春、一番最初に降る雨』の舞台挨拶が行われ、佐野伸寿監督、エルラン・ヌルムハンベトフ監督、女優のアナスタシヤ・ビルツォーヴァさん、ムラト・ヌグマノフ・プロデューサー、音楽を担当した蒲池 愛さんの5名が登壇しました。

 

まずは、佐野伸寿監督から「こんにちは。この作品は、4Kという非常に大きなサイズで撮影の最初から最後まで撮りました。残念なことに都合により今日は2Kで上映しますが、今までにない映像が見られるんじゃないかと思っています。」とご挨拶がありました。

 

佐野伸寿監督:今回の映画のきっかけは、2002年の福岡国際映画祭で佐藤忠男さんから”いい映画というのは人々がどう生きているかが描かれている、挨拶みたいなものなんだ。”ということを言われたことです。この言葉から、人々の心が暖まるような映画を作ってみたいと思いました。撮影を行なったのはカザフスタンと中国との国境付近なんですが、所謂ユーラシア大陸のへそみたいなところです。ここはパワースポットと呼ばれています。体の具合が悪い方、スクリーンに患部を向けていただくと帰りには治っているはずですので、最後まで味わっていただけると嬉しいです。ありがとうございました。

 

エルラン・ヌルムハンベトフ監督:本日は、東京国際映画祭でこの作品を見ていただけることを大変ありがたいと思っています。日本映画・ある視点部門での上映ですが、カザフスタンの日常を見ていただければと思います。

 

アナスタシヤ・ビルツォーヴァさん:本日は、お越しいただきありがとうございます。アナスタシヤ・ビルツォーヴァと申します。こうして皆さんにご覧いただくことができて、とても嬉しいです。どんな映画になっているのか分からないのですが、最後まで楽しんでください。

 

ムラト・ヌグマノフ・プロデューサー:私たちの作ったちょっと変わった映画が、このような大きな映画祭で上映することになり、関係者の皆さんにとても感謝しています。最後まで見ていただければ、幸せに思います。

 

蒲池 愛さん:カザフスタンの美しい景色と、佐野監督と皆さんの力が詰まった作品だと感じました。佐野監督は、「映像を見て、好きに考えてみてください。」と言ってくださいました。いいものが出来たと思っています。その中でも、お祖母さんの歌が素晴らしいですので、是非楽しんでください。

 

司会:アナスタシヤさんと蒲池さんは、上映後のQ&Aに参加しませんので、ここで少し質問をさせていただこうと思います。
アナスタシヤさんは以前ヌルムハンベトフ監督とお仕事をされたことがあるそうですが、その時のエピソードをお聞かせください。

 

アナスタシヤ・ビルツォーヴァさん:私の最初の作品は、役者になりたいと思っていなかったのに、エルラン(ヌルムハンベトフ)監督から無理やり引っ張られて、演技をさせられました。結局そのままずるずると映画の世界に入ってきて、今では映画の大学でプロデューサーの勉強をしています。そんな中、今回も東京国際映画祭に参加するということで、この先どこに向かっているのかわからないし、なんて言っていいのか分からないです。

 

司会:音楽を付けていく作業は、どのくらい時間がかかるものなのでしょうか?
 

蒲池 愛さん:参加したのは、今年に入ってからの話です。全く時間はかかりませんでした。大体音楽が最後だと思うんですけど、「全く音楽がない状態の映像を見て、好きなように考えてください。」とのことでしたので、感じるままにやらせてもらいました。
こんな大きな映画祭で上映するとは知らずに気軽に受けてしまったので、大きなスクリーンで見れることをとても嬉しく思います。最初からとても綺麗な映像が出てきますので、楽しみにしていてください。
 
春、一番最初に降る雨

©2011 TIFF
左から蒲池 愛さん(音楽)、ムラト・ヌグマノフ プロデューサー、アナスタシヤ・ビルツォーヴァさん(女優)、エルラン・ヌルムハンベトフ監督、佐野伸寿監督

 

また、10/29(土)にも、Q&Aが行われました。
 

登壇したのは、佐野伸寿監督、エルラン・ヌルムハンベトフ監督、ムラト・ヌグマノフ・プロデューサーの3名。

©2011 TIFF

 

Q:カザフスタンの映画は何本か見たことがありますが、どの作品とも違い、日本の輪廻転生とも違って不思議で面白い作品でした。お祖母さんの亡骸の上に、松ぼっくりを置いたシーン等は、民族的な習慣が背景にあるのでしょうか?

 

佐野伸寿監督:お祖母さんに関しては、アルタイ人です。カザフスタン人はイスラム民族なんですが、アルタイ人は日本の神道と発想が似ていて、そこらじゅうに神様がいると考えている民族です。このお祖母さんの役の女性は、アニメーションの監督なんですが、アルタイ人のシャーマニズムについてのドキュメンタリーを数本撮っていて、その分野には精通しています。松というものはあの世につながる物だということです。他に火やミルクもアルタイ人にとっては、生命を象徴するものだそうです。最後お祖母さんを火葬しますが、火=聖なる物の入口として描いています。

©2011 TIFF

 

Q:国籍が違う二人の共同監督ということについて、難しかった点を教えてください。
 

エルラン・ヌルムハンベトフ監督:共同監督については、特に問題はありませんでした。3月11日に日本で震災が起きましたが、ちょうどその頃に撮影をしていました。震災のニュースを見てショックを受け、日本人スタッフもいる中で、自分が日本に対してどう向き合えばいいかということが、難しかったです。
映画の撮り方については、各国共通することがあると思います。ある意味映画というものは共通言語ではないかと考えます。その共通言語を使って、色んな民族を映画の力で結びつけることができると思うし、その結びつきが共同制作で生きてくるんだと思います。

©2011 TIFF

 

ムラト・ヌグマノフ・プロデューサー:私たちは昔から知り合いだったので、難しいことはありませんでした。撮影地については、私が決めたんですが、20年ほど前にあの地域を通ったときに「いつかここを舞台に映画を撮りたい。」と思ったんです。今回シナリオをもらって「ここしかない!」と思いました。撮影自体は、楽しい時間だったのですが、期間が10日間とタイトな日程で、朝起床ラッパを使ってみんなを叩き起こして、夜遅くまで撮影をしていました。そこがきつかったです。

©2011 TIFF

 

Q:始めと終わりに流れた子守唄に歌詞がありませんでしたが、どういうことを歌っているんでしょうか。
 

佐野伸寿監督:あの歌は、アルタイ人のシャーマンの祈りの歌です。
日本でいう合いの手が続いているような歌です。掛け声のような言葉で、深い意味もありませんので訳を付けませんでした。歌うことによって神への感謝の気持ちを表している、本物のシャーマンの歌です。

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