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2011.11.08
[イベントレポート]
第24回TIFF最優秀芸術貢献賞受賞!――10/24(月)コンペティション『転山』:Q&A

転山

©2011 TIFF
受賞後のドゥ・ジャーイー監督と女優のリー・タオさん

 
2004年の秋、台湾出身の謝旺霖氏が、自ら自転車でチベットを走破した60日間のエピソードをつづった17篇の文章。これをまとめた作品集『轉山:辺境流浪者』を原作に(実質的な中国・台湾合作で)映画化されたのが、今年のコンペティション部門で最優秀芸術貢献賞を受賞した
転山』です。
その1回目(10/24(月))の上映終了後に、監督のドゥ・ジャーイーさん、助演男優のリー・シャオチュアンさん、(ある意味、ヒロインといっていいかもしれない)助演女優のリー・タオさん、プロデューサーのニーナ・ハンさん、美術のワン・イーさん、そして視覚効果のフー・シュアンさんを迎えてのQ&Aが行われました。
 
まずは、会場のお客さまへのごあいさつから。
 
ドゥ監督:どうもありがとうございます。こんなに多くのお客さまに観ていただいて、とても嬉しいです。これで賞は獲ったも同然ですね(会場笑)。
 
リー・シャオチュアン:(司会を務めた矢田部PDの「映画で見るよりお若く見えますね」を受けて)ありがとうございます(笑)。映画の中でシャオチュアンを演じました、リー・シャオチュアンと申します。日本が、東京が大好きです。生き返ってこれてよかったです。
 
劇中、シャオチュアンは自転車事故をおこし、重傷を負ってしまうというくだりがあるのですが、それを巧みにとり入れたリー・シャオチュアンさんの軽妙トークに、会場のムードが温まります。
 
リー・タオ:皆さんこんにちは。映画の中で若いチベット族の母親を演じております、リー・タオと申します。はじめて日本に来ることができて、そしてこうして皆さんと一緒に作品を観ることができて、とても嬉しく思います。この『転山』は風景だけではなく、青春と、試練と、夢と、そして希望のつまった映画だと思います。気に入っていただければ幸いです。
 
ニーナ・ハン:皆さんこんにちは。私はプロデューサーのニーナ・ハンと申します。大変残念なことに、もうひとりのプロデューサーであるタオ・クンは書類手続きの関係で来日することができませんでした。この映画の撮影はとても大変でしたので、こうして東京国際映画祭に来るチャンスをいただけたことをとても嬉しく思います。また、今日はこんなにたくさんの方々に観に来ていただきましたことに心から感謝いたします。私は、東京国際映画祭に参加するのは今回で2回目となります。前回はマーケットに、日本映画を購入するために参加したのですが、今回はコンペティション部門に、プロデューサーとして参加することができました。
 
ワン・イー:皆さんこんにちは。私はこの映画の美術を担当したワン・イーと申します。チベットでの撮影という素晴らしい体験をさせてくれたスタッフに感謝するとともに、東京都いう美しい都市に来ることができた喜びを感じています。
 
フー・シュアン:皆さんこんにちは。私はこの映画で特殊効果とともに、現場のライン・プロデューサーをいたしましたフー・シュアンと申します。私は日本に来たのがはじめてなので、とても嬉しく思っております。ただ、本当に残念なのは、プロデューサーのタオ・クンさんが来日することができなかったことです。彼に祝福をおくりたいと思います。
 
以下、会場とのQ&Aになります。
 
――夜のシーンで、修行僧の女性と主人公のシューハオが、一緒にお祈りをしていましたよね。その翌朝、シューハオは修行僧の女性から紙の束を渡され、最後に最高地点に到達した時に、その束を空に向かってまきますが、あの行為にはどのような意味があるのでしょうか?
 
ドゥ監督:ちょっとリラックスして答えてもいいですか?
 
といって、態勢をリラックスさせるドゥ監督に場内から笑いが。
 
ドゥ監督:あれはチベット特有の五色の紙なんですが、雪山に登ってこの紙をまくことによって、自分の過去、よかったことも悪かったことも全部捨てて、新しい明日を迎えられるという意味があるんです。また、あれは一種のWI-FIのようなものでして、天上の神様に「私は着きましたよ」と告げるツールでもあるんですね。
 
「ありがとうございました」とマイクを返す質問者の方に、監督から「最初に手を挙げていただきましたので、後ほどプレゼントを差し上げます」のお言葉が。会場が笑い声に包まれる中、監督が取り出したのは「チベットのお寺から持ってきた、小さな仏像」でした。
 
司会:2人目の方に何かプレゼントがあるかはわかりませんが(会場笑)。
 
司会に向かって、監督から「ありますよ」のサインが。
 
司会:あぁ、あるようですね(笑)。では、次のご質問を。
 
――題名の『転山』、英語タイトルの“KORA”も、どういう意味かわからないので教えていただけますでしょうか? また、なぜ夏ではなく、雪が降るような寒い季節に主人公のシューハオを旅立たせるようにしたのでしょうか? もうひとつ、陸路でチベットに入るには、四川省からとか、青海省からとか、色々なルートがあると思うんですが、あえてこの雲南省の麗江~ラサという過酷なルートを選択した理由をお教えください。
 
ドゥ監督:『転山』の“転”には、“輪廻”とか、ぐるぐる回るという意味があります。“山”はそのままの山ですね。また、“転山”=山をめぐるということは、チベット族の宗教行事でもあります。彼らは一生で100数回、山をめぐるんだそうです。この題名には、主人公の青年が成長する過程において、さまざまな試練を経験し、そして絶頂をきわめて、さらにひとまわり大きくなっていく・・・そういった意味が込められています。次に、厳しい環境、季節、旅程を選んだ理由は、これは人生も同じだと思いますが、ただ美しいだけでは幸福は得られない。その途中に苦しみがあるからこそ、それに耐えぬいて得た美しさ、幸福に価値があるのだ、と。おそらくこれは、いまの日本の皆さんには、より感じるものがあるのではないでしょうか。最後に、雲南省からチベットに入り、ラサを目指すというルートは、これは原作本に書かれていたルートがそうなっていたので、それを採用したまでです。あ、あなたにもプレゼントはありますので(会場笑)。
 
英語タイトルについてのコメントはありませんでしたが、会場が優しいムードに包まれていたせいか(?)、質問者の方も満足されたご様子でした。
 
司会:「あえて困難な道を~」という監督のお言葉がありましたが、リー・シャオチュアンさん、実際に、主人公の青年と一緒に自転車をこがれていましたが、撮影中に苦労されたエピソードなど、何かありましたら教えていただけますか?
 
リー・シャオチュアン:映画をご覧いただけたので、私の道のりがいかに大変だったかはおわかりいただけたかと思います(通訳笑)。今日、作品をご覧になって泣かれた方はいらっしゃいますか?
 
これを受けて、会場のお客さま何人かの手が挙がりました。
 
リー・シャオチュアン:では、僕たちのたくらみは成功したということですね(笑)。この映画は、ある種の精神について語っている作品だと思いますので、そういった部分を日本の皆さんにも感じていただければ嬉しいです。
 
司会:リー・タオさん、山奥でひっそりと生活をする女性を演じられましたが、苦労された点などあればお話しいただけますか?
 
リー・タオ:皆さんこんにちは、リー・タオです。
 
と、2回目のごあいさつから、質問へのお答えに。
 
リー・タオ:私は今回、チベット族の母親役を演じましたが、実際には漢民族の人間です。チベット族と漢民族は文化が大きく異なりまして、話す言葉や文字、宗教も違います。外見や醸し出す雰囲気も異なりますので、監督はロケ地に着いた私に、まず「以後、化粧はしないように」と、チベット族の純朴な感じを出すようにといわれました。その後、撮影チームに合流した私が最初にしたことは、私の家族―舅、姑、息子を演じた、現地の、本もののチベット族の人たちと親しくなって、家族のムードをつくりだすことでした。また、もうひとつ大事なことは、監督は私に「一切笑うな」とおっしゃったんですね。私の役は未亡人なので、全体的に鬱々としていてほしいと。結果的に、私は撮影期間の半月ほど、1回も笑うことはありませんでした。今日、私は皆さんと一緒に作品を観ていたのですが、思わず涙をこぼしてしまいました。それは、本当に仲良くなった家族のこと、主人公=シューハオとの間に芽生えたほのかな感情、そういったものに感動してしまったのです。アリガトウゴザイマス。

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