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2011.09.30
[インタビュー]
【TIFF学生応援団がきく!TIFFの楽しみ方 Vol.1 】 “「香川京子と巨匠たち」”

都内の大学に通う学生たちが集い、第24回東京国際映画祭を応援する”TIFF学生応援団”。彼らが、映画祭とそこで上映される映画の魅力を学生目線で伝えるために映画祭スタッフなどにインタビューする新企画。

 

第1弾は特集上映「香川京子と巨匠たち」の楽しみ方を、TIFF学生応援団 平岩英佑くんが、作品のこと、事務局でのお仕事のこと、映画業界を目指す若い世代へのアドバイスを聞いてくれました。

 

今回のインタビュー会場は、喫茶 "人形町 三日月座"地下のBaseKOM試写室です。

 

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女優・香川京子さんが、映画遺産の保存活動に貢献した人物に贈られるFIAF賞を受賞されました。9月6日には受賞記念の記者会見に参加し、香川さんのお話を聞き、お人柄に触れ、映画祭の特集上映「香川京子と巨匠たち」を見たい気持ちでいっぱいになった僕は、そんな思いをぶつけようと特集上映をご担当する映画祭事務局作品チームのお二人にお話を伺いました。

 

― お二人は作品チームですが、それはどういった仕事内容なのでしょうか?

田中文人(以下. 田中):映画祭で上映される作品のすべての部分に関わることです。上映される作品を“選び”、出品を“交渉”し、そしてゲストの方が来場された時にはその“アテンド”をします。もちろん、世界中の新しい作品を選ぶのも大事ですし、今回の「香川京子と巨匠たち」のような旧作特集も企画します。

 

 

― 今回、香川京子さんがFIAF賞を受賞されたこともあると思いますが、香川京子さんの特集を行うきっかけは他にもあったのでしょうか?

田中:FIAF賞というのは、国際フィルムアーカイブ連盟という組織が、映画の保存や修繕に貢献された方に贈る賞です。日本では国立近代美術館フィルムセンター(NFC)がこの連盟に所属していて、以前からNFCと映画祭とで何か一緒にできたらと話がありました。今回の香川さんの受賞もあって、ぜひ良い機会ですから協力体制をとりましょうと。映画祭では過去の傑作、名作を違った視点で上映し、作品を再発見してもらう、後世に伝えていくのも大きな仕事だと思っています。ここ数年このような特集はやっていなかったので、力が入っていますよ。

 

 

―香川京子さんの魅力は? 日本映画の巨匠たちに愛された理由はなんでしょうか?

田中:香川さんがデビューされたころは日本映画が黄金期へと勢いよく駆け上がっていく時代でした。そんな中で、香川さんはデビューして10年の間に、小津、溝口をはじめ数多くの巨匠の作品に出演されています。知的な美しさはもちろん、可憐でいて力強い存在感、確かな演技力、どの監督も彼女をつかいたい、と思う理由が、作品を観るとよくわかりますよ。今でもその魅力に変わりなく現役で活躍されている。こんな方はほかにいらっしゃいませんよ。お話しも本当に面白い。ユーモアにあふれて。香川さんの立ち姿、ぜひ映画で見てみてください。すらりとした姿勢!デビュー当時の香川さん、なんか「少女時代」のメンバーにいてもおかしくない、と思わない?(笑)

 

 

三場秀重(以下.三場):普段はシリアスな役が多いのですが、実際はコミカルな役がお好きだそうです。そういうところもいいですよね。

 

 

―「香川京子と巨匠たち」はどのような特集上映になりますか?

田中:映画祭では9本の作品を英語字幕つきで上映します。今回の授賞式のために新たに35ミリフィルムをニュープリントし英語字幕も新しくした『近松物語』が、FIAF賞の授賞式にあわせて上映されます。NFCでは2ヶ月という長い期間をかけて、約50本の出演作を上映します。また香川さんご本人が寄贈された貴重な撮影時のスナップ写真や台本などもNFCで展示しています。

 

 

― どうしたら、若い世代に『近松物語』をはじめ昔の作品を見てもらえるのでしょうか?

田中:僕も10代のころは、古い映画つまんないなあと思ってたんです。角川映画で育った世代ですから。でもね、TVで観た黒沢映画や、有名でもない白黒の映画に、はっと今の自分と変わらない何かを感じたりするんです。それが記憶に残る。年をとって観直すと新たな発見がある。何度も観るうちに面白くなってくるんですよ。この前も、映画祭で上映される『東京物語 デジタルリマスター』を2回観て、2回とも泣けました。年ですかね(笑)。

 

三場:昔は名画座も多かったよね。駅前には必ず二本立てで古い映画をやってて。今は娯楽があふれているからね。

 

田中:かつての、映画が娯楽文化の王様という価値観が今では大きく違いますからね。極端な例ですけど、昔の例えばホラー映画の宣伝って「決して一人では観ないでください」とか、夢に出るぐらい強烈な宣伝していたんです。そうしたら二人以上で来るから儲かるんだろうけど(笑)。それくらいして、お客さんを劇場に呼び込むことが必要なんだけど、難しいですよね。若い人に興味を持ってもらうって。

 

三場:昔は食事を抜いて映画を見ることもあったぐらい。スクリーンで見ることの経験がやっぱり大事。DVDとか家で気軽に見るのも良いのですけど、やっぱ劇場のスクリーンで見てもらうことが一番必要なのかな。逆に、今は昔の作品も気軽に見られるから、好きな監督・俳優を中心に自分の好きな映画をみてもらって、その延長線上に昔の作品があればいいね。

 

 

―『近松物語』の中で特に見てもらいたい点とかありますか?

田中:『近松物語』に限らず、昔の作品を見て、「日本人は今も昔も」変わらないな!っていうのを発見してほしいかな。俳優、美術、風景、画面に映るすべてを観てほしい。

 

三場:ストーリー自体は学生にもわかる内容だったりするから、そこを楽しんでもらえればいいんじゃないかな?(笑)

 

田中:観た人が何か1つでも気に入ってくれるところがあれば、それが一番嬉しいです。「香川京子さんがかわいいな」それでも良いんですよ。

 

 

―この特集で学生に見てもらいたい一本は?

田中:『赤い陣羽織

山本薩夫監督は『白い巨塔』、『華麗なる一族』、『不毛地帯』と言った社会派の超大作を撮った人なんですよね。作る作品が大体3時間を超えるのに、観ていて全く飽きない。そんな硬派な監督が撮った作品なんだけど…これがすごいお色気コメディ(笑)うーん、たしかにこれも階級社会批判か?(笑)っていう作品だけど、とても面白いし賢い奥方役の香川さんも素晴らしいので是非。主演は今の中村勘三郎の父親の先代勘三郎です。

 

三場:『男はつらいよ  寅次郎春の夢

とても良くできている。アメリカ人と日本人のやりとりをネタとして、昔も今も変わらないんだ、という今見ても面白いストーリーになっている。

 

 

― 映画の仕事をしたいと思っている若い世代に期待することと、アドバイスをお願いします。

田中:映画に限らずですけど、いま流行ってるものじゃなくて、次に流行るものを見つけないと、モノって売れない。皆がいま楽しいと思っていることの一歩先を見てないと、新しいものなんか生み出せない。じゃあその「新しいもの」のヒントってどこにあるかっていうと、過去にある、と思う。日本人が本当に好きなもの、日本人だけじゃなく世界中の人が好きなもの、昔の映画を観てるとそれが変わらないんだって思う。今よりずっと新鮮な感性も表現も、昔の小説や映画にじゃんじゃんありますよ。温故知新、です。あとは、まあ、絶対辞めないこと、かな。

 

三場:映画業界は新しいものをどんどん取り入れてしぶとく生き残っている。年齢の高い人も、有名な監督も新しい技術も必ず熱心に勉強している。そんな優秀な先輩方を見習っていけば良いのじゃないでしょうか。

 

 

この対談は“昔の映画と若い人”の話題に尽きました。いかに若い人に昔の良作を観てもらえるか。観なければ分からない良さがある、しかし若い人に観てもらえない。このジレンマを埋める事が一番の課題と実感しました。そこでこの特集を通じて、香川京子さんの出演する素晴らしい作品を観て、何か一つ、何か感じてもらいたい。そう言った強い想いを持ってこの特集が始まったのだと、強く感じました。昔の映画を見て学ぶことで、新しい映画文化を築いていけるのではないでしょうか。

 

※<FIAF賞>
国際フィルム・アーカイブ連盟(FIAF)が、映画遺産の保存活動に貢献した人物を表彰するため、2001年に定めた賞。授賞式は各国の主要な映画祭などで行われ、受賞者には1000フィート缶をかたどった純銀製賞牌が渡される。
過去の受賞者 2001年マーティン・スコセッシ(アメリカ)、2002年マノエル・ド・オリヴェイラ(ポルトガル)、2003年イングマール・ベルイマン(スウェーデン)、2005年マイク・リー(イギリス)、2006年侯孝賢(ホウ・シャオシェン)、2010年リブ・ウルマン(ノルウェー)

次回もお楽しみに!!

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