受賞者記者会見には、最優秀芸術貢献賞を受賞した『転山』のドゥ・ジャーイー監督、観客賞を受賞の『ガザを飛ぶブタ』のシルヴァン・エスティバル監督&主演女優のミリアム・テカイアさん、<日本映画・ある視点>作品賞『ももいろそらを』の小林啓一監督、<TOYOTA EARTH Grand Prix>グランプリ『鏡は嘘をつかない』のカミーラ・アンディニ監督、審査員特別賞を受賞した『ハッピー・ピープル タイガで暮らす一年』のドミトリー・ワシュコフ監督も出席。マスコミとの質疑応答を繰り広げました。
こちらでは、上記受賞者の皆さんの記者会見でのコメントをご紹介します。
■最優秀芸術貢献賞『転山』──ドゥ・ジャーイー監督
台北出身の青年が、兄の遺志を継いで自転車でチベットを目指すという『転山』。撮影は平均海抜3,000メートルの高地で行なわれたとのこと。ジャーイー監督は「毎日が辛く大変だった」と振り返り、「12月に入って温度が低下し、冬の強い風の中で撮影を行ないました。まさに崩壊寸前のギリギリの環境でした」と苦労を語ったほか、「『世界一高い場所で撮影された映画』とギネスに申請したのは本当ですか?」との記者の問いには、「え? そんなことあったんですか?(笑)」と回答。「高い場所なら、もっともっと高いところで撮った『アバター』があるじゃないですか」と続けて、会場の笑いを誘いました。
■観客賞『ガザを飛ぶブタ』──シルヴァン・エスティバル監督&女優ミリアム・テカイアさん
不浄な生き物とされるブタの始末に往生する男の姿を通じて、地域の平和への祈りを描く心温まるコメディ『ガザを飛ぶブタ』。エスティバル監督は、日本の観客にも受け入れられた理由を「パレスチナの民族問題を扱ってはいますが、結局は人間と動物がどのように関係を築いていくかというユニバーサルな(世界に共通する)話です。だからこそ受けたんだと思います」と分析。ブタを登場させたのは、「ユダヤ教とイスラム教はすごく遠い存在なのに、ブタを同じように“不浄なもの”として捉えているんです。ですから、両者を近づける存在、平和の白いハトの代わりに、ブタを使いました」と明かしました。
監督と旧知の仲でもあるテカイアさんは、「ブタとの演技よりも、監督との仕事の方が楽でしたよ(笑)」とひと言。続けて「映画の中のブタはオスでしたが、演じているのはメスなんですよ」と明かし、監督は「最優秀女優賞は、彼女(?)でもよかったかもしれませんね」とおどけました。
■<日本映画・ある視点>作品賞『ももいろそらを』──小林啓一監督
小林監督が「原田博志プロデューサーと自分たちの名刺として作った」と語った『ももいろそらを』は、モノクローム映像も印象的な、新聞の採点を日課にしている女子高校生が、大金の入った財布を拾ったことから始まる物語。小林監督は構想のきっかけを「女子高生を主人公に世間を切ったら面白いんじゃないか、というアイディアから」と明かし、「ストーリーが当初の予定を超えて、どんどん膨らんでいったのがよかったです」と語りました。
題字を書いたお祖父さんは、去る9月に他界されたとのことで、「自分にとって思い出深い特別な作品になりました」と、言葉に詰まるひと幕も。
■<TOYOTA EARTH Grand Prix>
グランプリ『鏡は嘘をつかない』──カミーラ・アンディニ監督
審査員特別賞『ハッピー・ピープル タイガで暮らす一年』──ドミトリー・ワシュコフ監督
エコロジーをテーマにした「TOYOTA EARTH Grand Prix」では、グランプリ『鏡は嘘をつかない』のカミーラ・アンディニ監督と、審査員特別賞『ハッピー・ピープル タイガで暮らす一年』のドミトリー・ワシュコフ監督が登壇。「受賞の理由はなんだと思いますか?」の問いには、お2人揃って「それは審査員に聞いてもらった方がいいんじゃないですか?」との答え。ワシュコフ監督は「映画監督は誰でも“自分が受賞するはずだ”と思っているものですよ」と答え、アンディニ監督は「私は受賞できるとは思っていなかったです(笑)」と回答しました。
『ハッピー・ピープル』の共同監督、ヴェルナー・ヘルツォークさんが「ショート・バージョンを作った方がいい」と話したことについての質問が飛ぶと、ワシュコフ監督は「ヘルツォーク監督とは数回会っただけで、私が作品で伝えたいと思ったことを理解してもらえましたから、私がまったく参加することなしに本作の短縮版が完成しました」と回答。ただし今回のTIFFでは「私が監督したロング・バージョンです」と続けました。