Home > ニュース > 25歳の監督が描く少女の成長物語――10/23 アジアの風『鏡は嘘をつかない』 Q&A
ニュース一覧へ 前のページへ戻る
2011.10.27
[イベントレポート]
25歳の監督が描く少女の成長物語――10/23 アジアの風『鏡は嘘をつかない』 Q&A

日時・場所 Q&A:10月23日(日) 16:30~ TOHOシネマズスクリーン6

登壇者 カミーラ・アンディニさん(監督/ストーリー)、フグアさん(エグゼクティブ・プロデューサー/ワカトビ県知事)

 

父の形見の鏡が世界の真実をうつし出すと信じている少女の成長をファンタジックに描いた作品、アジアの風―中東パノラマ『鏡は嘘をつかない』。その上映後、弱冠25歳のカミーラ・アンディニ監督とエグゼクティブ・プロデューサーのフグアさんが登壇、Q&Aが行われました。アンディニ監督は、国際的に評価の高いガリン・ヌグロホ監督の長女でもあります。

鏡は嘘をつかない
©2011 TIFF

 

Q:どうしてこういったテーマにされたのですか。そして、ワカトビで撮ったのはなぜでしょうか。

 

カミラ・アンディニ監督(以下、アンディニ):初めに、私たちの映画を見て下さった日本の方たちにお礼を申し上げます。この映画は、私の最初の長編映画です。以前、ダイビングをするために初めてワカトビを訪れた際、ワカトビの自然や自由に海で生きる海洋民族のバジョ族の方々にとても興味を持ちました。2009年にワカトビ県のフグアさんと知り合い、バジョの方々と深く交わるようになって、この海の中で生きていくバジョの方々というのをテーマに映画を作りたいと思うようになりました。

 

フグア エグゼグティブ・プロデューサー(以下、フグア):この場にお招きいただき、ありがとうございます。
この映画で私が伝えたかったことは、自然がいかに地球温暖化から影響を受けているかということです。私はこれまで、ワカトビ県の知事として、知識的なことやフォーラム的なことを一生懸命発言してきました。今回の映画をきっかけに、より多くのみなさんにこの問題に注目していただけるのではないかと思っています。ワカトビ県は、世界に類を見ないサンゴ礁の豊富さで有名なところです。この映画はワカトビ県、世界自然保護基金(WWF)の協賛を受けており、サンゴに加えてバジョ族の文化の多様さ、それから生態系の多様さというものを描きたいと思って映画を作りました。

 

Q:この映画では、少女が父親の死を受け入れるまでの感情の動きが非常に繊細に描かれていると思いました。監督のお父様である、ガリン・ヌグロホ監督から影響は受けましたか?

 

アンディニ:繊細さに関しては、父も繊細な映像を撮る映画監督でしたので影響は受けたと思います。生まれた時から父の元で育っていますからね(笑)ただ、父のおかげだけでなく、フグアさんをはじめとしたワカトビの方々、WWFの方々など、ビジョンを共有した人々のサポートによって、この作品は完成したと思っています。


©2011 TIFF

 

Q:登壇された監督がとても若いことに驚きました。特に監督の時間の経過の飛ばし方が独特だなと思ったのですが、映画の中の時間の流れについての特別なお考えがあれば、教えてください。

 

アンディニ:時間の使い方は、日々起こっていることをそのまま描いてるだけで、わたしにとっては自然な方法です。時間が行ったりきたりするのは、その時の心の雰囲気を描いたり驚きを現わしたりといった感覚からきています。私は多くを語る人間ではないので、観た方に感じたままを感じていただきたい、任せようと思っています。

 

Q:この映画は、父親を失って再生していくという希望のあるお話だと思いました。作品のなかで1番笑いがおこるシーンは子供たちが生き生きと歌うシーンだと思うのですが、あの歌は実際に子供たちが即興で作ったものなのですか?

 

アンディニ:ワカトビの子供たちは素晴らしい、自然な演技をしてくれました。歌のシーンは、ほぼ即興で子供たちが歌を作ったので、脚本にのっていない部分も多くありました。日常的に彼らは韻を踏む詩を読み、それを歌にして遊んでいるので、生き生きとした様子が表れているのではないかと思います。

 

Q:その子供たちは、どのようにキャスティングを行ったのですか?

 

アンディニ:この映画では、母親とイルカの研究者以外の役を、地元の方々に演じていただきました。子供たちのキャスティングは1度終わっていたのですが、撮影が予想以上に延びてしまい、彼らは成長しすぎてしまったので、もう1度キャスティングをし直しました。ルモを演じた子供は、キャスティングのときに、「ぼくは歌えないけど、映画は出来るぞ!演技出来ます!」と笑わせてくれたので選びました(笑)

 

フグア:子供たちの明るさは、ワカトビの人たちを端的に表しているのではないかと思っています。ワカトビの人たちは、美しい自然の中で生をエンジョイしています。皆さんにもぜひワカトビを訪れていただいて、美しい自然を味わいに来て頂ければと思います。


©2011 TIFF

 

Q:主人公の母親が顔をマスクのように白く塗っていましたが、ワカトビには未亡人は顔を白く塗らないといけないものなのでしょうか?または、何か特別なことを意味しているのですか?

 

アンディニ:同じ質問を何度もされているので、答えるのに慣れてしまいました(笑)バジョの人や他の海で生きる民族たち、特に女性は、日差し対策でこのように白く顔を塗るのです。もちろんそればかりではなく、夫を亡くして、他の男性から身を守りたいという彼女の気持ちのメタファーでもあります。解釈は観客の方に委ねたいと思いますが、例えば主人公は鏡に父親を見る、母親は顔を白く塗ることで自分の仮面とするといったように、それぞれ自分たちの問題をそのモノに託して、なんとかして自分を守ろうとしているのではないかと思います。
 
鏡は嘘をつかない

KEIRIN.JP本映画祭は、競輪の補助を受けて開催します。TIFF History
第23回 東京国際映画祭(2009年度)