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2011.10.28
[イベントレポート]
人種の問題を乗り越えて――10/24(月) コンペティション『ガザを飛ぶブタ』:Q&A

10月24日(月)、コンペティション『ガザを飛ぶブタ』の上映後、出演したミリアム・テカイアさんが登壇、Q&Aが行われました。

 

ガザを飛ぶブタ

©2011 TIFF

 

Q:どのような経緯でこの作品に参加したのですか?

 

ミリアム・テカイア(以下テカイア):中東状況に関する本を読み、目からうろこが落ちるような思いをしたことがきっかけです。その本をきっかけに、現状を変えるために自分に何ができるだろうかと想像してみました。

この映画のアイデアは、監督が旅行中に思いついたものです。そのアイデアがよかったので、先に監督と練っていた他の脚本をストップして、この映画に専念することになりました。監督の頭の中には、レッド・カーペットが目の前に見えるほど作品の構想が出来上がっていたので、私は、チュ ニジア人として文化的な側面をサポートしました。

 

Q:主演のサッソン・ガーベイさんは、どんな方でしたか。

 

テカイア:この役を演じることは、彼にとって非常にリスクの大きいことだったと思います。脚本の完成から撮影開始まで2年の月日がかかり、その間に政治的な状況も大きく変わりましたが、ガーベイさんは気持ちを変えずに引き受けてくれました。非常に素晴らしい寛大な方だと思いま す。

また、彼は編集にかかわらないので、ときどき質問をされました。彼が疑問を抱いたときには毎回確認作業を行い、完成後に彼が驚かないようにしました。これはある種の信頼関係を築くということでもありました。本当にリスクを恐れない、素晴らしい方だと思います。

 

―― そのリスクについて簡単に説明します。サッソン・ガーベイさんはイスラエル人ですが、パレスチナ人の役を演じています。そして、ミレアムさんはフランスとチュニジアの二つの国籍を持っていらっしゃいますが、イスラエルサイドの役を演じています。

 

 

Q:今回の試みは、どれだけ大胆なことなのでしょうか。

 

テカイア:フランスでは、アラブ人はこうだとか、イスラエル人はこうだとか、人種ごとのステレオタイプが根強く残っています。監督はこの問題について非常に敏感なのです。また、ある意味では私もこのステレオタイプの被害者です。私は100%アラブ人なのですが、フランスにいると、「あら、あなたは全然アラブ人に見えないわね」と言われたりします。このような言葉も、人々の偏見の表れだと思います。

ユダヤ人とアラブ人がお互いを演じるということは、面白いことであると同時に、個人的な挑戦でもありました。監督から「きみ、ユダヤ人の役やってもらうよ」と言われたときには、本当に驚きました。俳優の人種と役の人種を交換させることによって、苦労したこともあります。ジハーディスト(聖戦士)のチーフであった青い目の彼は、非常に有名なイスラエルの俳優なのですが、「やはりパレスチナ人の役はやりたくない」と渋りだしたことがあります。私が「ジハーディストは黒い髭のアラブ人というイメージが強くあるので、あなたに演じてもらうことによって、そのステレオタイプを打ち破ってほしいのです。」と説得し、最終的には彼にも 「これはゲームだな」と受け取っていただくことができました。

 


©2011 TIFF

 

Q. キャスティングで難しいことはありましたか?

 

テカイア:この作品には、パレスチナ、イスラエル、シリア、リビア、エジプト、チュニジア、アルジェリアの人々が出演しています。フランスにはパレスチナ人があまりいないため、パレスチナの人に会ったり雇ったりすることは非常に難しいことでした。また、イスラエル人の兵士をやる俳優を早急に探さなくてはいけなかったのですが、「政治的なターゲットにされるかもしれないから」と3人に拒絶されたこともありました。

 

Q. 撮影中はどのような雰囲気でしたか?

 

テカイア:非常に良かったと思います。おそらく、その大きな理由のひとつは、国を離れてマルタ島で撮影したことだと思います。時にはパレスチナ人とイスラエル人がいることによって緊張が走ることもありましたが、お互いに両国のバランスを非常に気にかけ、歴史によって傷ついた人たちであるということを認識していました。また、役者の方々はアーティストですので、この問題を正確に描いてほしいという気持ちもあったと思います。その気持ちに応えられるように、フェアかつ公平に描くように努力をしました。

 

Q. ブタとの共演は大変でしたか?

 

テカイア:監督は、良い雰囲気が作れたのは動物のおかげだと言うのですが、俳優としてはブタとの共演は大変でしたし、良い経験ではありませんでした(笑)このブタは野生のブタだったので、女優の私がブタの機嫌や動きに合わせなくてはいけませんでした。特に大変だったのは兵士に追われて逃げるシーンです。まるでサラダボールが転がっているかのように草がたくさん生えているので、ブタは止まって草を食べてしまうんですね。私はブタのお尻を叩きつつ、兵士から逃れて一生懸命走っている演技をしなければいけなかったので、とても大変でした。私でなくブタの演技が悪かったということで カットされたシーンもあります(笑)

 

Q. ブタはオーディションがあったんですよね?(笑)

 

テカイア:実際にオーディションをして、5頭が応募してきたので、一番美しいブタを選びました。オスの役なのですが、実はメスが演じていて、スタントのブタもいました(笑)ブタが海から釣りあげられるシーンは、もっと小さい赤ちゃんブタが演じています。監督はこのオーディションに特別の思い入れがあったようなので、彼が来たときに詳しく聞いてください(笑)
ガザを飛ぶブタ

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