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2011.10.28
[イベントレポート]
ずっと映画を愛していて、いつか自分で映画を撮りたいという夢に向かった――10/25(火)アジアの風『備えあれば』:Q&A

10/25(火)アジアの風『備えあれば』の上映後、シュー・チュアンハイ監督、プロデューサーのシー・フオン(アンディ・シー)さんが登壇、Q&Aが行われました。
(司会は石坂健治アジアの風プログラミング・ディレクターです。以下:司会)
備えあれば

©2011 TIFF

 

司会:この映画は世界初上映です。まず一言ずつご挨拶をいただきます。

 

シュー・チュアンハイ監督(以下、監督):皆さん、こんにちは。私は、この『備えあれば』の監督のシュー・チュアンハイと申します。本当に皆様、仕事のお忙しい時間の合間を縫ってこの映画を観に来てくださって、心からの感謝の意を申し上げたいと思います。
備えあれば

©2011 TIFF

 

シー・フオン(アンディ・シー)プロデューサー(以下、プロデューサー):こんにちは。私はプロデューサーのシー・フオンと申します。実は、もうすでに1回Q&Aを行っていますけれども、本当に日本と、そのほかの国の観客の方が熱心に観てくださいましたことを感謝したいと思います。本日もまた皆さんに来ていただいてうれしく思っています。ありがとうございます。
備えあれば

©2011 TIFF

 

Q:監督はいわゆる映画学校はお出になってないですけれども、どういう道筋でこの長編のデビューまでこぎつけたのか、教えてください。

 

監督:実は私は理系なんですね。西安にある西安交通大学というところを出ているんです。でも、ずっと映画を愛していて、映画が好きで、映画をいつか自分で映画を撮りたいという夢がありましたので、その夢を果たすために本当に独学で、まず映画の知識を詰め込みました。そして、今度は実践が必要だと思いまして、短編の監修をしたり、実際にデジタル映画なども撮ったりしております。それは、多分ネット上で見ることができるかと思います。その中でも特に『ジッパー』というタイトルの映画を撮っております。これはやっぱりいろいろ未熟なところもあると思います。

私は理系で学習能力だけは高いので、たくさんの映画関係の書籍を集めまして、勉強しました。あと、自分に関係なくてもクルーに入って、撮影の最初から最後までついて、どういうに実際に映画撮影をするのかということを勉強しました。

 

司会:日本でも理系のほうが文系よりも勉強するんでしょうかね。

 

監督:どこも同じなんでしょう(笑)

 

Q:シーさんは、監督を起用してこういう映画を作ろうというのは、どういうふうな気持ちだったのでしょうか。

 

プロデューサー:私は、映画が撮れる人っていうのは物語を語る能力がある人だと思っているんですね。で、この監督は、普段の生活でも本当に話をするのがうまいんです。映画というのは、物語を視覚と聴覚に訴えてみせるものだと思いますので、監督が書き上げた脚本を私たちスタッフが読みまして、非常に内容にも感動しました。それから、もう一つ感動したのは、これは本当にあったことなんですね。本当に監督が見聞きしたことに手を加えて、今の脚本にしているんですね。そこも非常に面白いと思いました。それから、監督自身が参加した作品、自分で撮った短編なども観まして、出来不出来はいろいろあるんですけれども、非常に才能がある人だと思いましたので、一緒に仕事をしたんですね。そして、出来上がった作品を観て、とても満足しています。そして、おかげさまで監督と一緒にこうして東京に来れたこともとてもうれしく思っています。

 

Q:私は、北京からシルクロードを旅して、ゴビ砂漠にも行ったことがあるのですが、その時の風景を思い出しました。撮影はやはり大変でしたか。

 

監督:ええ、撮影は非常に大変でしたね。と言いますのは、これは9月に撮ったんですけれども、撮影場所が昼間と夜の温度差が非常にあるところでして、昼間ですと45℃くらいになるんですね。地面の温度は70~80℃くらいになりますので、スタッフもキャストも最初に耐えなければならないのは、“酷暑”です。で、夜になりますとものすごく冷えますので、夜のシーンを撮るときには私たちは中国の「綿入れ」を着込んでいました。

それから、撮影場所はトルファンの近くなんですけれども、風がものすごいんですね。本当に大風が吹くと、列車がそのまま倒されてしまうぐらいのところなので、私たちの撮影もすごく風に悩まされました。立ってられないほどの風が吹きます。それから、もちろん砂嵐もありました。

ゴビ砂漠ですが実はそこで4年ほど生活した経験がありますので、そこのことはよく知っております。まずスタッフとキャストに行ったことは絶対に単独行動をしてはいけない、とにかくどんなときにも命の危険性があると思ってくれ、と言いました。それぐらい大変なところなんですね。80年代に有名な中国の地質学者がいたんですけれども、彼はゴビ砂漠で行方不明になって、死体も骨もいまだに見つかっていないです。

 

Q:劇中で主人公の息子さんが歌を歌うシーンがあってすごい上手だったんですけど、彼はプロの歌手なのでしょうか。

監督:俳優です。中国の俳優はみんな歌が上手いんです。実はシーさんも歌が上手いんですよ(笑)

 

Q: お金を巡る映画で、古典的だとジョン・ヒューストン『黄金』や最近では韓国映画の『10億』という作品があります。中国も日本もいま格差社会で、この作品もお金を巡るテーマで最後はお金だけじゃなくて水を巡るトラブル、水こそが大事だとなっていたんですが、現代社会に対して監督はどのようにお考えになるのか教えてください。あと影響を受けた監督や作品がありましたら教えてください。

監督:最初の質問についてですが、まさにおっしゃるとおり、今の中国は急速に経済が発展していて人々が金や財産を求めるという私利私欲の為には手段を選ばないという傾向がある中国社会を風刺しています。人の心であるとか人間性というものがおざなりになっているという、目下の状態のクレイジーさに対してもう少し考えてみてもいいんじゃないか、あるいは反省したほうがいいのではないかということを描いています。そうでなければ、周囲の人々を苦しめたり傷つけたりしてしまうということを描きました。
そして次の質問ですが、申し訳ないのですが、わたしは作品名や監督名が覚えられないのです。ストーリーと監督が込めた思いや伝えたいことにものすごく感動し影響されるんですけど、作品のタイトルはとにかく忘れてしまうんです。

 

Q:監督は次回作にどのような作品を撮りたいとお考えでしょうか。
監督:次回作について脚本はもう出来ているのですが、この作品のように今の社会に生きる名もない人たちの物語です。こういう社会の中でやるせないとかそういう思いを抱えながらも生活に立ち向かっているそういう人々。でもそういうところに泥棒というか賊が登場してそうした善人たちを巻き込んでいくという中国語のタイトルでは『泥棒に狙われても怖くない』なのですが、泥棒シリーズでいきたいと思っているんですが、正式なタイトルはいまのところ秘密です。

 

Q:大変面白かったです。(劇中の)事件の発端になる殺し屋はどうなったのでしょうか。

監督:彼は大ボスのような存在なんですけど、彼はピイのところに何度も何度も売ってくれと一緒に採掘しようと言ってきたという設定になっているので状況説明みたいな役割がありました。一回マッサージ屋のようなサウナみたいな場所で、「人を雇って殺してやる」というセリフで出てきます。私は彼のような人物を出したことで、今の中国の社会には、金儲けの為には手段を選ばない人たちが現実にいることを表現したかったんです。本当に今の中国はなんでもありで、不動産とか株に奔走するだけではなくニンニクや綿、ジャガイモなどのブローカーがいます。ジャガイモに関しては去年大売れに売れた影響で多くの人が作り過ぎて今年は全然ジャガイモが売れないという事態になったりしていて、とにかくお金に左右されている人が多くいます。

 

Q:ありがとうございました。それでは最後に一言ずつお願いします。

監督:今日はたくさんのマスコミの方、お客さんに来ていただきありがとうございます。少しでも気に入っていただければ嬉しいです。

プロデューサー:東京国際映画祭の事務局と石坂さんをはじめ今日お越しいただいた皆さん、本当にありがとうございます。

備えあれば

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