すでに速報でお伝えしている通り、第24回東京国際映画祭「東京 サクラ グランプリ」に輝いたのは、エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ監督の『最強のふたり』。同作は主演のお2人、フランソワ・クリュゼさんとオマール・シーさんが揃って最優秀男優賞にも輝くという、ダブル受賞を果たしました。最優秀女優賞を獲得した『アルバート・ノッブス』のグレン・クローズさんも含め、皆さんは仕事の都合のため欠席となりましたが、クロージングセレモニーの興奮も冷めないなか、各賞受賞者による記者会見が行なわれました。
役所広司さんと小栗旬さんが主演し、『南極料理人』の沖田修一監督がメガホンをとった『キツツキと雨』がは審査員特別賞を受賞。若手とベテラン、日本映画が誇る2大俳優を演出した沖田監督は、「どちらの俳優が仕事しやすかったか?」の質問に、「役所さんも小栗さんも、どちらも脚本をすごく気にしてくれる方で、2人ともやりやすかった」と回答。「(映画監督という)自分の経験は反映させているが、25歳の映画監督という、これまでにないキャラクターを意識して作っていった」と、ゾンビ映画の撮影に奮闘する新人監督と撮影にかり出される60歳の木こりの交流というストーリー作りの内情を明かしました。
最優秀監督賞には、『プレイ』のリューベン・オストルンド監督が輝きました。受賞の一報を「プロデューサーと作品に関わってくれた友人」に知らせたという監督は、「とても喜んでくれました」と報告。黒人の少年たちが白人の子どもたちに“カツアゲ”を行なう姿を通して、スウェーデン、ひいてはヨーロッパが抱える問題を衝撃的に描き出した同作について、「描いているテーマはヨーロッパでは賛否両論。(先日映画祭で訪れていた)ニューヨークや今回の日本でどう受け止められるだろうかと気にしていました」と、心情を語りました。
問題作といえる内容だけに、内容についての質問が記者からいくつも飛びます。監督はひとつひとつに丁寧に答えながら、「作品で描いていることはかなり現実に沿っています。私が興味深いと感じたのは、黒人の少年たちが、悪い黒人の大人のそぶりを真似ている(黒人ギャングのロールプレイ)という点でした」と明かし、「ヨーロッパが抱えている移民問題の影響を一番受けているのは、低所得者層です。こうした社会に不満を持った人たちによって右翼思想が力を持っていますが、その怒りは、自分たちと同じ、もしくは下の層にぶつけられています。問題は存在するのに、中流や上流の人たちを含めて共有できてないことが問題だと思います」と解説。「今後はこうした移民の問題が、(ヨーロッパの映画製作における)重要なテーマになっていくと思います」と持論を結びました。
キツツキと雨
プレイ