記者会見では、5人の審査員によるコメントの発表、および質疑応答も行なわれました。
エドワード・R・プレスマン審査委員長
今回の審査委員長で映画プロデューサーのエドワード・R・プレスマンさんは、「すべてに同意したわけではないが、結果には満足しています」とのこと。同じく映画プロデューサーのキース・カサンダーさんは、18年前に参加したTIFFを振り返り、「前回は、選びたい作品が少なくて苦労しました。今回は作品の粒が揃った素晴らしい映画祭でした」と語りました。女優のファン・ビンビンさんは、「(審査内容という)秘密をやっと話すことができて嬉しいです。(私たちが下した)今回の授賞結果は“完璧なエンディング”を演出できたと思います」と自画自賛し、特殊メーキャップ・アーティストのレイコ・クルックさんも、「映画製作に関わっている立場からすると、映画を審査するというのはあまり心地良いものではなかったですが、いいジャッジができたと思います」と続けました。
レイコ・クルックさん
一方で、映画監督の小林政広さんは、「映画監督としての目線で観ましたが、刺激的だったり、芸術性に富んだ作品がほとんどありませんでした」と苦言。「ストーリーが面白かったり、いわゆるウェルメイドな作品が多かった印象。」と語りました。
小林政広さん
プレスマンさんは審査委員長の総評として、小林監督のコメントを受けつつ「バランス」という点を強調。「とても実験的で監督の意欲を非常に感じた『プレイ』を全員が気に入っていましたが、議論をすることも多く、確かに小林監督が言うように、実験的な作品は多くはなく、トラディショナルなもの……でもそれは非常に上手く作られているものが多かったように思います。エンターテインメント性、社会性、政治性など、映画はバランスを重視して評価されないといけません。そういう意味で、今回の審査員はバランスが取れていると思いませんか?」と続けました。
とはいえ、やはり「東京 サクラ グランプリ」「審査員特別賞」「最優秀監督賞」の主要3部門の審査は手こずったようで、「グランプリには、『キツツキと雨』は軽妙すぎないか? 逆に『プレイ』だとダークすぎる、ということで、相対的に『最強のふたり』に決定したのです」とその苦労を明かしました。
ファン・ビンビンさん
記者からの「(映画祭に出品されるような)作家性の強い作品が劇場でヒットしない時代だが、そういった時代における映画祭の役割とは?」という質問には、カサンダーさんが回答。「娯楽性の高いハリウッドの大作に劇場を押えられてしまっている状況はヨーロッパも変わりませんが、だからといって映画の未来がないわけではありません。(カサンダーさんが製作を務めた)『コックと泥棒、その妻と愛人』のような作品がロングランの大ヒットを記録することはもはやありませんが、インターネットを通して広く観客に観てもらえるという未来があります。良作を紹介して、広く観てもらうきっかけになる。そのスタートとしてコンペティションがあると考えれば、映画祭はしっかりと役割を果たしていると思います」と語り、会見は終了を迎えました。
キース・カサンダーさん