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2011.10.31
[インタビュー]
【公式インタビュー】 コンペティション 『夢遊 スリープウォーカー』

公式インタビュー コンペティション 『夢遊 スリープウォーカー
 
オキサイド・パン監督
夢遊 スリープウォーカー

©2011 TIFF

 
人間の根元的な恐怖、普遍的な物語をホラーで表現する

 
 
『夢遊 スリープウォーカー』は、3Dであることを除けば、いつものオキサイド・パンの映画であった。それは、パン兄弟の名を世界に知らしめたヒット作『THE EYE【アイ】』、『リサイクル 死界』に引き続き、リー・シンジエ(アンジェリカ・リー)がヒロインのホラー映画ということも大きいだろう。香港育ちでタイに移り、パン兄弟名義も含め多数のホラー映画を作り出し、『ゴースト・ハウス』ではハリウッドにも進出し、ワールドワイドに活躍するオキサイド・パン監督にお話をうかがった。
 
――奥様であるリー・シンジエさんがヒロインであるということもあり、『THE EYE【アイ】』、『リサイクル-死界-』と3部作のようにも思えました。共通点はヒロインが非常に怖い思いをして、自分の限界まで行き、真実を知るという物語です。
 
オキサイド・パン監督(以下、パン監督):決して意図的なものではありませんが、そこが映画の面白いところですね。観客がそのように受け取って、そう仰ってくれると、作り手側もそうなのかな、と思う。私はホラー映画であっても、ストーリーを非常に重視しています。自分の人生の経験、プロセスをなるべく映画の中に盛り込みたいと思いますし、他人を観察するのも好きです。例えば新聞記事を読んでいると殺人事件があり、犯人と被害者がいる。普通はそのふたつの要素しかないと思いますが、私はその間にあるものを考え、埋めていく作業が好きです。殺す理由、殺される理由などと考えていくと、映画のストーリーになります。
 
――シンジエさんにはシナリオに対する意見をもらったりするのでしょうか。
 
パン監督:そうですね。よく彼女にはシナリオ段階で意見をもらったりします。ただ、今回の映画に関しては台詞のことでアドバイスを貰ったくらいです。撮影は北京語で行われ、自分は広東語ですので、彼女に北京語に関するアドバイスを貰いました。
 
――子供を失う母親の心情に関しては、男性である監督が全て考えたというには、リアリティがありすぎましたが。実際にそのような事件に遭った方に逢われたりしたのでしょうか。
 
パン監督:実際に事件に遭われた方には逢いませんでしたが、新聞報道やドキュメンタリーなどはよく観ました。ただ、人にとって一番つらいことは、近しい人間を前触れもなく突然、なくすことだと思います。それに男とか女とかはあまり関係ないのではないか。リアリティがあると感じてくれたのであれば、この映画は成功しているということだと、嬉しく思います。
夢遊 スリープウォーカー

©2011 TIFF

 
――3作ともヒロインは現実と現実ではないものの間を彷徨うわけですが、その現実とは違うものへの入り方がいつも非常に怖いです。今回の作品でも、彼女自身が夢遊病者ではないかと疑い、ベッドの周りに白い粉を撒く。朝起きるとそこに足跡がついている、というのがゾーッとしますよね。脚本から書かれていると思いますが、ああいうシーンはどのように思いつくものなのでしょうか?
 
パン監督:彼女は夢遊病ではないかと疑っていて確信がないので、自然な方法だと思いますが(笑)。あとは観客とのゲームみたいなものですよね。観客も、彼女が試す様々な方法によって、徐々に彼女への疑いを強めていく。逆にお聞きしたいのですが、ご自分が「夢遊病かな?」と思ったらどうしますか?
 
――すぐ病院に行きます(笑)。
 
パン監督:でも兆候がなければ、病院には行かないでしょう。朝なかったコップがそこに置いてある、それだけでも非常に怖い画面になります。それを見つけた瞬間が、ホラーになります。
 
――監督は非常にビジュアル的に優れた画面を作る天才だと思います。『THE EYE【アイ】』でも心底ゾーッとしたシーンがいくつもありましたし、『リサイクル-死界-』の異界のシーンも、どうやったら思いつくのだろうと疑問を持つほどのものでした。
 
パン監督:視覚効果についていつも非常に褒めていただくのですが、自分としては、何か特別なことをやっているつもりはないんです。現場に行きセットを見て、カメラ位置はここから、とそんな風にやっています。ただ、あまりにみなさんに視覚的に「かっこいい」とか「怖い」とか言って頂くので、今後は変えてみようと思っています。画面作りは十分だということは分かったので、ストーリーの方に力を入れていきたいと思っています。今回の作品も、意図的に怖い場面は減らして、優しさや倫理観というものを入れています。
夢遊 スリープウォーカー

©2011 TIFF

 
――この作品は、ご自分が10年くらい見た荒地の夢がきっかけだったということですが。
 
パン監督:荒地に死体が埋まっているという夢を、10年間毎日ではありませんが、しょっちゅう見ました。勿論、自分で殺人を起こしたわけではないということは分かっているんですが、何度も見るうちに、もしかしたらと自分を疑うようになっていってしまう。本当に殺人を犯した人間であれば、眠れないということは当然なのではないか、と考えたことがこの作品の原点になっています。
 
――3Dにした効果はいかがでしたか?
 
パン監督:私は3Dも技術のひとつにすぎないと思っていて、それに合わせて何か映画を変えることはしていません。ズームが開発された時はみんなすごいと思い、「どうしてズームで撮ったのですか?」などという質問もあったのではと思います。ただ、今回3Dで画面効果が増したことは事実だと思います。ホラー映画はもともと密室に主人公が閉じ込められる恐怖というものがあると思いますが、3Dにすることによって、観客もあたかも密室に主人公とともにいるように、圧迫感を感じることができます。
 
聞き手・夏目深雪(批評・ライター)
 
 夢遊 スリープウォーカー

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