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2011.11.02
[インタビュー]
【公式インタビュー】 コンペティション審査委員長 エドワード・R・プレスマン

公式インタビュー コンペティション審査委員長 
 
エドワード・R・プレスマン
公式インタビュー エドワード・R・プレスマン

©2011 TIFF

 
第24回のコンペティション作品、審査を終えて
 
フランス映画『最強のふたり』が東京サクラグランプリと最優秀男優賞の2冠に輝き、幕を閉じた第24回東京国際映画祭。審査委員長を務めた米国のプロデューサー、エドワード・R・プレスマンは、1991年(第4回)のヤングシネマ1991コンペティションの審査委員長として、ジャン=ピエール・ジュネ、マルク・カロ両監督の『デリカテッセン』(ゴールド賞)を見いだした実績を持つ。
今回の選考結果については、「審査員のコンセンサスをとるのが難しかった」と振り返りつつも、「大変、熱い議論が交わされ満足している」と胸を張った。
 
――15本のコンペ出品作を審査するに当たって心がけたことは?
 
エドワード・R・プレスマン(以下プレスマン):事前に何か考えていることはなく、全くオープンな気持ちで臨みました。賞の選定プロセスは私が決めていいと言われましたが、私の意見を押し付けるのではなく、できるだけ民主的なプロセスで決めようと思いました。
 
――4人の審査員をまとめるのは苦労したのでは?
 
プレスマン:監督、プロデューサー、女優など、それぞれの立場で見方や趣味が違う。総体的にはトラディショナルなつくりの作品が多かったが、審査においてはエンタテインメント性や政治性など評価のバランスを考えなくてはいけない。当然、いくつかの賞については意見が対立することもあったが、ディベートを繰り返し大変熱い議論が交わされ、結果には満足しています。
 
――選考過程において評価が高かった作品は?
 
プレスマン:『最強のふたり』『キツツキと雨』『プレイ』の3本で、全員が好きだったのは『プレイ』。とても実験的で、監督の意欲、冒険が感じられた。この3本に関しては意見が分かれ、コンセンサスをとるのが難しかった。
 
――ではなぜ、『プレイ』がグランプリではなかったのか?
 
プレスマン:最も冒険している作品だとは思うが、審査員の中にはダークすぎる、希望がないという意見も出ました。どちらにも転びかねない状況だったが、最後は投票で決めました。
 
――『最強のふたり』をグランプリ、最優秀男優賞に選んだ決め手は?
 
プレスマン:主演のふたりの演技が、忘れられないものであるのは明らか。オマール・シーは、ただそこにいるだけでマジカルな存在だったし、フランソワ・クリュゼは首から上だけの演技をしなければならないという、至難の業を見事にこなしていました。映画としてはリアリティを示しており、実話に基づいているということがさらに深みを与え、深刻なテーマにもかかわらずエンタテインメント性があり、明るく希望を持たせる構成にインスパイアされた人が多かったようです。
 
――日本映画で唯一コンペに選出され、審査員特別賞を獲った『キツツキと雨』の印象は?
 
プレスマン:フランソワ・トリュフォー監督の『映画に愛をこめて アメリカの夜』(1973)を思い出しました。同じような映画製作を題材にした映画で、自分がフィルムメイカーということもあってすごく面白かった。自分たちの仕事のバカバカしさのようなものもよく出ていたし、俳優の演技も印象に残りました。
 
――個人的に好きだった作品は?
 
プレスマン:『より良き人生』や『トリシュナ』もいいなと思いました。『デタッチメント』も(主演の)エイドリアン・ブロディが好きなので良かったのですが、私の意見は少数派で残念でした(笑)。
 
――国際映画祭におけるコンペティションの役割とは?
 
プレスマン:世界中の(興行的には)あまり注目されない良質な作品が、多くの人に見てもらえるという意味で、十分な貢献を果たしています。これからは劇場だけでなく、いろいろなメディアで観る機会が増えていくでしょうし、そのスタートが映画祭のコンペだと思います。
 
――開幕前、20年ぶりの東京、東京国際映画祭を再発見することを楽しみにしていると話していたが?
 
プレスマン:全体的なクオリティは上がっていて、水準の高い作品が集められたと思います。ただ、20年前の『デリカテッセン』は抜きん出ていました。いまだに忘れられない映画で、ジュネの天才性は、その後、彼がつくった作品が本当に素晴らしいことでも証明されているはずです。
 
――審査員の経験が、自身の映画製作に及ぼす影響は?
 
プレスマン:いい作品からだけではなく、悪い作品からも学ぶことが多いということでしょうか。悪い作品を作るのは簡単ですから。映画館に行くときは自分の観たい映画を選びますよね。でも審査員になると『これだけ見なさい』と言われ、自分だったら絶対に観ようと思わない映画を見られる“チャンス”がある。そういう作品を観られたことも良かったと思います。
そこで、あえて批判的なことを言えば、実験的な作品が少なかった。特にジャンル映画といわれる作品は、審査員の間ではほかの作品と同じレベルの敬意をもって扱われてはいませんでした。別にジャンル映画を観せるべきではないと言っているのではなく、そういった映画が本当に素晴らしくない限り、なかなか高い評価は得られないということです。
 
聞き手:鈴木 元(映画ジャーナリスト)

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